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2005/07/21

第91幕 3冠王も夢ではない

雑誌とリー
自分の記事が載った日本の雑誌に思わず笑顔

前半戦を2冠(打率、本塁打)で折り返したデレク・リー(カブス)が、オールスター出場後も、全く疲れを見せることなく打ちまくっている。ブルワーズのカルロス・リーに次いで2位だった打点も、7月19日には首位トップタイ(77打点)に並び、この時点で3冠王に。しかし翌20日には31号本塁打を放って打撃3部門ですべてが単独トップとなり、押しも押されもせぬ「3冠王」になった。

今年はこれまでの「スロースターター」を返上し、開幕直後からコンスタントに打ち始め、気がつけば「4割」だ「3冠王」だと騒がれるようになっていた。打点部門でトップを走っていたカルロス・リーがオールスター直後から急ブレーキがかかったのと対照的に、デレクは好調を保っている。チームの指揮を執るダスティー・ベイカー監督は「集中力が途切れない」ことを好調の要因に挙げていた。

日本で過ごした子供のころは、けっこう落ち着きがなく、注意力も散漫なところがあったのに、今はすっかり落ち着き払い、どんなことがあろうと、浮き足立つこともなくなっている。しかもこれだけ騒がれているのに、何があろうともそれほど大きく喜怒哀楽を表すこともなく、常に穏やかな表情を保っている。どこでどのようにギアが入れ替わったのだろうか。

リーと家族
好調の源は家族、ジェイダちゃんとクリスティーナ夫人

20日にヤンキース対レンジャーズ戦の中継をしていたESPNでは、試合の実況はそっちのけで、解説者がデレクの3冠王について熱く語り続けていた。それほど注目を浴びているのに「3冠王? なれたらいいよね」と本人はまったくのマイペース。オールスター後にリグレーフィールドで打った28号本塁打を見る機会に恵まれたが、まるで打撃練習でもしているかのような力の抜けた、しなやかな打撃フォームが印象的で、これだったら「いける」という期待感が沸いてきた。

 今シーズン、突然躍り出たデレクに好調の原因を聞くと、意外な答えが返ってきた。これまでの経験の積み重ねが花開いたことに加え「結婚して睡眠時間が増えたことと、娘(ジェイダ=2歳)が生まれて、父親としての責任感と日常生活が充実感で満たされていること」なのだという。38年ぶりの3冠王となれば騒がれないほうがおかしい。しかし「僕が到達したいのは3冠王じゃなく、ワールドチャンピオンのほうだよ」と記者の質問をかわすテクニックも一流になってきた。

野球ジャーナリスト 鉄矢 多美子

◎このコラムは毎週金曜日更新予定です

鉄矢 多美子(てつや・たみこ)

 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。

 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。

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