巨人辻内「速い」「速い」原監督たまげた
巨人の注目ルーキーがベールを脱いだ。辻内崇伸投手(18=大阪桐蔭)が第1クール最終日の5日、プロ初のブルペン入りでピッチングを披露。捕手を立たせて50球、投げ込み、2軍練習に駆けつけた原辰徳監督(47)も思わず「速い! 速い! 速い!」と3連発の仰天スピード。辻内は緊張でボールが乱れる場面もあったが、最速156キロの片りんを披露した。まだファームで育成段階だが、順調に階段を上がって開幕1軍切符をつかめば、巨人の高卒ルーキー投手では66年の前監督堀内恒夫氏以来、40年ぶりとなる。
午後1時、辻内がプロ初のブルペンに立った。原監督や清武代表らが見守る御前投球。普段は人影がまばらな2軍ブルペンに、ファン約150人が集結。報道陣も合わせ約200人もの人垣ができた。異様な雰囲気の中、辻内は右足で丁寧にプレートをならし「お願いします」と言って、振りかぶった。
捕手を立たせて「ほとんど全力で」直球を50球投げた。「きちんとミットに投げられるかな…」。力みで球筋が定まらない。それでも24球を投げた時点で軽いストレッチを挟むと、ボールが指にかかり始めた。
辻内「人がいっぱいで緊張した。甲子園並みでした。ずっとキャッチャーを見ていた。無心で放りました」。
最後の50球目がこの日のベストボールだ。以前、手の大きさが自慢の上原と、手のひらを合わせて比べたことがあった。ほとんど同じ指の長さに、エースは目を丸くしていた。その長い”“滑走路”から放たれた、ホップするような重いストレートが鈍い音をたてて、ミットに収まった。
大野ブルペン捕手「重い球質。高卒1年目とは思えない」。
注目の新人左腕の相手役は「スマイル、スマイル」と繰り返して、緊張感を和らげようとした。もっともその必要がないほど、辻内の速球は圧倒的だった。
中日前田スコアラー「第一印象は、速い。スピードは、教えられてできるものではない。今後伸びたら怖い。体も(昨夏の)甲子園の印象より大きく感じた」。
ここまで順風満帆というわけではなかった。キャンプ入り直前に風邪で発熱。それでも焦りの言葉は決して漏らさなかった。「(キャンプでの初ブルペンを)自分のけじめにしたい」と決めていた。本音をなかなか口に出さない辻内が、前々から秘めていた思い。揺れない自信があった。
川崎市のジャイアンツ球場で行われた1月の新人合同自主トレ。辻内は、自主練習のほとんどを体幹強化に費やした。キャンプイン後の夜間練習では、テニスのサービスのようなシャドーピッチングを繰り返した。「フォームも良くなってきました。夜間の効果が出ている」。地道な準備でこの日を待っていた。
フィーバーを見詰めた長嶋一茂・球団代表特別補佐は「これ以上の喜びはない。甲子園のスターが入ってくるのは、やはり素晴らしい」と人気回復の救世主誕生を確信した。じっくり育てる首脳陣の方針もあり1軍昇格は未定だが、順調にいけば、堀内以来40年ぶりの高卒ルーキー投手の開幕1軍へ視界が開けてくる。6カ月前、甲子園を沸かせたのは、もう過去の話。初ピッチングで高校時代とけじめをつけ、「巨人辻内」として、新たなスタートを切った。【宮下敬至】
[2006/2/6/09:47 紙面から]
写真=今キャンプ初めてブルペンに入り50球の投球練習を行った辻内
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