【WBC】米も認めた誤審、消された1勝
<WBC2次リーグ1組:米国4−3日本>◇12日◇米カリフォルニア州アナハイム
【アナハイム(米カリフォルニア州)12日(日本時間13日)】王JAPANが審判の判定変更で「歴史的1勝」を逃した。国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の2次リーグ初戦で、日本は、優勝候補の米国と対戦。9回サヨナラ負けした。3−3の8回1死満塁、岩村の左飛で、三塁走者西岡がタッチアップし生還した。だが、マルティネス監督が離塁が早いと抗議し、判定が覆った。初回のイチローの先頭打者本塁打などで優位に試合を進めていただけに、後味の悪さが残った。米国内でも判定変更に批判的な報道が出ている。
「アナハイムの悲劇」が起きた。王監督は何度も首を振り、左手を回しながら球審の元へ向かった。約3分間。通訳を介し、時には自ら「ノー」と連発しながら、猛然と抗議した。「野球がスタートしたと言われる米国で、そういうこと(判定変更)があってはならない」。試合後の記者会見で、王監督は厳然とした口調で言い放った。
同点の8回だった。1死満塁。岩村が左飛を打ち上げ、三塁走者西岡がタッチアップした。日本が勝ち越した、と誰もが思った。米国は捕手が、三塁のカバーに入ったジーターに送球し、西岡の離塁が早かったことをアピール。確認を求められた二塁塁審は両手を広げた。
これに米マルティネス監督が抗議した。「判定を下すのは、球審のはずだ」。今大会では三塁走者の離塁は球審が判定する決まりになっている。球審は二塁塁審に事情を説明した上で、「アウト」に覆した。歴史に残る一戦は、思わぬ形で水を差された。
王監督「いくら抗議があったとはいえ、変えるということは日本で長年、野球をやっているが、見たことがない。一番近いところにいた審判がセーフと言っているのに、遠くにいた審判が変えるのはおかしい。世界中で見ているのに、アメリカのためにもならない」。
野球は明治初期に、米国から日本に伝わったとされる。それから1世紀以上の時を経た。親善試合では日米で何度も戦ってきたが、国の威信をかけた真剣勝負はこの試合が初めてだ。「プロに入ったときから正力さん(松太郎氏=巨人初代オーナー)に『米国に追い付き、追い越せ』と言われていた。念願でもあったし、実現してうれしい」と王監督はこの舞台を待ちわびていた。日本は互角以上に戦った。昨季のナ・リーグ奪三振王、ピービから、イチローが先頭打者本塁打で先制点を奪った。2回には川崎の適時打で2点を追加した。守っては小刻みな継投で必死に防戦し、メジャー軍団を相手に1歩も譲らなかった。9回、A・ロドリゲスのサヨナラ安打に飛び込み、弾いた二塁手の西岡はグラウンドに倒れ、天を見上げて動かなかった。あと1歩で金星を逃した悔しさが、見えた。
ユニホームを脱いだ王監督は、穏やかな口調に戻った。「初めての真剣勝負でみんなよくやったよ。アメリカも野球発祥国のメンツがあるから必死だった。世界の人に日本の野球をアピールできたと思う。選手たちはいい財産を得たよ」。この1敗を思い出にするつもりはない。「メキシコ、韓国に勝って、もう1度、米国にチャレンジする」。米国とともに2次リーグを勝ち抜けば、18日の準決勝で再戦。新たな歴史を刻むチャンスはある。残り2試合、勝つしかない。【中村泰三】
[2006/3/14/08:37 紙面から]
写真=8回表1死満塁、打者岩村の左飛でスタートを切る三塁走者の西岡。右はジーター
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