|
2003/08/14
|
 |
織田裕二のマル秘話とは…
―踊る大捜査線2 レインボーブリッジを封鎖せよ!(公開中)―
ここまで大ヒットすると、このコーナーでも触れないわけにはいかないだろう。映画版「踊る大捜査線」の第2弾である。なんといっても売り物になっているのが主演・織田裕二(36)のバイタリティー。というわけで、ここでは彼の精神力の強さを裏付ける秘話を披露しよう。
3年前の年末、日刊スポーツ映画大賞の表彰式のことである。この年、織田が主演した「ホワイトアウト」がこの賞の目玉ともいえる石原裕次郎賞に決定した。裕次郎さんをほうふつとさせるスケールの大きな作品として高い評価を得たのだ。この作品に企画段階から参加し、思い入れも強かった織田は笑顔で表彰式に出席するはずだった。が、当時織田は疲労性の腰痛に悩まされていた。後に腰椎椎間板ヘルニアであることが明らかにされ、出演していたドラマ「ロケットボーイズ」の放送が延期されたことは記憶に新しい。この賞の主催者側スタッフの一人として出席は難しいと思っていたのだが、当日、彼は会場に姿を現わした。
会場は東京・紀尾井町のホテル・ニューオータニ。織田を乗せたバンは、機材の搬入や従業員の出入りに使う裏口に到着した。助手席に乗った織田は降りるのも辛そうな様子である。この年の秋、ぎっくり腰を体験していた私は痛みが脳天に突き抜け、1ミリも身体を動かせなくなる脂汗の状況を思い出し、心の中で両手を合わせていた。出迎えスタッフは私のほかに4人。この中で「ホワイトアウト」の配給会社の担当宣伝マンはひと際体格が良かった。力仕事を予期しての配置だったのかもしれない。彼が支える形で織田をホテルが用意した車いすに乗せた。日ごろは目にすることがない殺風景なホテルの従業員通路を進む。TBSドラマ「ホテル」を見たことがある人ならある程度想像できるだろう。機材搬入で台車を使うケースが多いからだろうか、段差がほとんどない。これは救いである。経験者にしか分からないが、かすかな振動でも痛みはビリッとくる。もちろん脳天までくるやつだ。
一方で、織田の登壇時間は刻々と迫っており、私のトランシーバには舞台近くにいる進行責任者から数秒ごとに確認と催促の連絡が入る。車いすを押す宣伝マンもしだいに足早になる。会場階に上がるためエレベーターに乗り込んだ時だった。勢い余った車いすがゴンッと鈍い音をたてて壁にぶつかった。ほかのスタッフは誰も気にもかけなかったが、私は織田が「ウッ」とノドの奥を鳴らしたのを聞いた。いや、聞いた気がしたというべきかもしれない。その後、厨房の狭い通路を抜けて舞台横に到着した。厨房の人たちは織田と気付きながらもその鬼気迫るといっていいだろう、真剣な表情に気おされたように黙々と見送った。
私は車いすのまま舞台下まで進むものだと思っていた。が、「会場の皆さんに心配かけたくない」という織田の意思で、松葉杖で一人で歩いての登場となった。なんと笑顔まで見せていた。それでも表彰役の石原まき子さんは直感的に織田の状況を理解したのだろう。織田の歩数を可能な限り少なくするために駆寄るようにして賞状を手渡した。その後も笑顔で張りのある声で喜びの弁を語る織田を見ながら、私の方が脂汗をかく思いだった。精神力には感服した。感動的な表彰式となったことは言うまでもない。
「事件」は舞台裏で起きていたのである。ところで、今作で織田ふんする青島刑事の名セリフを逆手に取り、「事件は現場じゃなくて会議室でおきているのよ」と断言して本当に会議室で“事件”を起こしてしまった女性管理官(真矢みき)。同情の余地のないトホホな設定にかえってかわいそうに思ってしまったのは私だけだろうか。
(このコラムの更新は毎週木曜日です)
【相原斎】
|