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裏CINEMA by相原斎
    2003/08/21 バックナンバーへ

映画の中のアフリカ

―トゥームレイダー2(9月20日公開)他―

 このところ頻繁に映画の中に「アフリカ」が登場している。すでに公開された「名もなきアフリカの地で」では舞台そのものだが、9月公開予定の「トゥームレイダー2」「リーグ・オブ・レジェンド」といったSF活劇にくくられる作品でも強い印象を残している。さらに米海軍特殊部隊シールを題材にした10月公開の「ティアーズ・オブ・ザ・サン」もアフリカでの特殊任務が描かれている。それぞれに癒しの大地、生命の源、神秘、恐怖と象徴的な使われ方をしている。人類発祥の地、ロマンを感じる最後の地というイメージがあるからだろう。

 20年前、「少年ケニア」のアニメ映画化に伴い、原作者の山川惣治さんとかの地を訪ねたことがある。山川さんがケニアに行くのが初めてだったのにも驚いたが(つまりあの作品は文字通りの“創作”だったわけである)、現地の人たちの“超”能力と不思議な魅力が印象に残った。

 草原での約1週間のテント生活。われわれの移動用バンのドライバー、ハリソン氏はマサイ人で推定年齢30歳前後。英語力は私よりかなり上だった(当たり前か)。移動中、数分毎に地平線の先の方を指差し「キリンだ」「シマウマだ」と教えてくれる。その瞬間、私たちには何も見えない。しいて言えば毛先のようなものが見えた気がするだけである。車が近づくと、それは「米粒大の何か」になり、やがてキリンやシマウマのそれもかなりのスピードで移動中の輪郭として視認できるまでになる。自慢ではないが、今でも両目の視力が1・5の私にしてそうなのである。ハリソン氏の視力は5・0か8・0か。仕掛けのないMr.マリックの超魔術を見せつけられたようなものである。

 一方で、毎夕テントの設営が終わるとハリソン氏はバンに乗って「自分の家」に帰った。「なぜ、一緒にテントに泊まらない?」と聞くと「お前たちは勇気があるからここで寝る。私は利口だから安全なところで寝る」というようなことを言った。ある朝、起きるとテントの間近にボーリングの球のような糞が大量にあった。ハリソン氏は「像の群れがすぐそばを移動したんだ。スリルを味わえただろう」と白くて大きな歯を見せた。シニカルな物言いには人をひきつける、ホッとさせる何かがあった。

 こんなことを思い出したのも、冒頭に挙げた作品には、超常現象の起こる、あるいは癒しの土地としてのアフリカが登場するからである。「トゥームレーダー2」で主人公(アンジェリーナ・ジョリー)が「パンドラの箱」を発見するアフリカ奥地のシーンでは、樹木から飛び出す影のような生き物が登場した。「リーグ・オブ・リジェンド」では、死んだはずの主人公(ショーン・コネリー)の墓が呪術師の祈りで動き出した。SF作品とはいえ、このテのシーンがスッと受け入れられたものアフリカのイメージがあるからだろう。

 ナチスの迫害から逃れ、ケニアで暮らすことになったユダヤ人一家の少女(カロリーネ・エケルツ)の成長を描いた「名もなきアフリカの地で」では、少女をさりげなく守り、愛情をそそぐ現地の男性(シデーデ・オンユーロ)がいい。自然に、人に温かく包まれるような雰囲気がこの映画の持ち味にもなっている。

 一線を画しているのが「ティアーズ・オブ・ザ・サン」だ。内戦、テロの恐怖に満ちた現代の一断面が描かれる。それでも、優しさや希望を失わない結末にホッとさせられるのはそこがアフリカだからかもしれない。

 アフリカとひとくくりにしてしまうのはたいへん乱暴な話で、北アフリカにはまた別の雰囲気があり、そこを舞台にした作品は…などと書き始めるときりがないので、それはまた別の機会に。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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