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裏CINEMA by相原斎
    2004/01/15 バックナンバーへ

意外な初共演 意外な関係

―ニューオーリンズ・トライアングル(1月31日公開)―

 ジーン・ハックマン(73)とダスティン・ホフマン(66)が初共演した作品だ。「キャスティングの妙」は映画の大きな魅力のひとつだが、これは極め付きの組み合わせといっていいだろう。ともに2度のアカデミー賞に輝いた2人の共演が初めてというのがまず驚きだが、あまり知られていない2人の関係についてもここで紹介しておこう。

 2人は46年来の親友だ。50年代の後半をともにパサディナ演劇学校の研究生として過ごした。その後、ハックマンは妻とともにニューヨークへ引っ越したが、数年後、これを追うようにホフマンもニューヨークへ移り、ハックマン夫妻の小さなアパートに転がり込んだ。

 ホフマンが寝泊りしたのはキッチン。当時の2人は舞台の仕事を探しながらバイトで生計をたてていた。ハックマンはおもに引っ越し業、ホフマンはデパートでオモチャの実演販売などをしていたという。ハックマンは「映画の仕事をするなんてまったく考えていなかったね」と当時を振り返っている。映画全盛時の日本同様、俳優は映画会社に専属するシステムの時代であり、専属スターはあくまで二枚目。彼らのような個性派が脚光を浴びることはなかった。

 映画デビューがともに67年というのも象徴的だ。ハックマンは「俺たちに明日はない」、ホフマンは「卒業」だった。映画作りが、スターシステムからアメリカン・ニューシネマと呼ばれる個性的なものに梶を切った時代の転換点である。以来、文字通りなくてはならない存在となった2人が映画登場から36年にして初共演というのだから記念碑的作品といっても言い過ぎではないだろう。

 劇中、ハックマンが演じるのは手段を選ばない被告側の陪審コンサルタント。陪審員制の米国ならではの職業だが、陪審員の選択にアドバイスするだけでなく、裏側から彼らを巧みに操り、判決を思いのままにしようとする。ホフマンはこれに対する原告側の人権派弁護士だ。同じ法廷に居合わせるシーンは少なくないが、セリフのやりとりをする場面は実は1ヵ所しかない。裁判所のトイレの中で本音でやり合う、台本にして5ページ分のシーンだ。

 その場面は後半、さりげなく始まるのだが、ピーンと張り詰めた空気が伝わってくるようだ。ハックマン演じるコンサルタントの不正に怒りを爆発させるホフマンの目は掛け値なしに迫力がある。「巨人の星」のメラメラと燃える目が重なるような雰囲気だ。これを受けるハックマンがかもし出す、どこか後ろめたい表情。表面的な強気の裏側をさりげなく垣間見せるその加減は名人芸と言っていいだろう。

 このシーンだけで見る価値あり、だが、作品そのものも異色の裁判モノとして見応えがある。銃の乱射事件で犠牲者となった未亡人が、銃の製造と販売の責任を問い、大手銃器メーカーを訴えてドラマは幕を開ける。未亡人側がホフマン、銃器メーカー側がハックマンというわけだが、主人公としてスポットを当てられるのは陪審員となった1人の青年(ジョン・キューザック)と彼をバックアップするナゾの女(レイチェル・ワイズ)だ。通常の裁判モノと違うのは、このドラマが陪審員を巡る法廷外の暗闘を中心に描かれていること。ヘンリー・フォンダ主演の「十二人の怒れる男」(57年)の“場外乱闘バージョン”とでもいったらいいだろう。

 詳細には触れないが、見ているこちらは手に汗を握りながら、何度も登場人物にだまされ、意外な結末へと導かれる。メガホンは「サウンド・オブ・サイレンス」(01年)、「クローン」(02年)などで知られるゲイリー・フレダー監督。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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