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裏CINEMA by相原斎
    2004/05/27 バックナンバーへ

乗れるかそれるか

―キューティーハニー(5月29日公開、日本)―

 永井豪作品といえば、小学6年の夏(68年)に少年ジャンプで連載が始まった「ハレンチ学園」であり、そこには少年の下半身をうずかせるインパクトがあった。出会った時期というのは重要なポイントである。少年チャンピオンで「キューティーハニー」の連載が始まったのは73年の秋だ。すでに高校2年になっていた私にとっては正直言ってやや“卒業”気味の分野だった。が、今になって思えば、流行中の“着エロ”“コスプレ”の先駆的存在であることは間違いない。

 庵野秀明監督が「ハニー」の原作に出会ったのは小学生の時、強烈な刺激を受けたことは想像に難くない。「今回の実写映画化にあたっては、僕が好きだった部分は全部取り入れています」という思い入れたっぷりの作品となっている。

 映画は、いきなりハニーにふんする佐藤江梨子(22)の入浴シーンから始まる。そこに電話で緊急連絡、彼女がオジサマと呼ぶ宇津木博士(京本正樹)が誘拐された! 首のチョーカーに触れて「ハニーフラッシュ」と叫んで変身し、現場に急行するシチュエーションのはずである。が、エネルギー不足。下着姿にゴミ袋をまいただけの姿で走り出したハニーは“エネルギー源”のおにぎりをコンビニで仕入れると、これをほおばり、さらに走り最後はゴミ袋も吹き飛んだところでへ〜ん身!!―かなり特異というかぶっ飛んだ“ハニー世界”にいきなりぶち込まれるようなオープニングだ。じわじわといつの間にか引き込まれた、というような手法はとらない。ぶちかまし型である。ここで乗れる人は一気にその世界を楽しめるだろうし、乗れなかった人はなかなか抵抗感が抜けないかもしれない。

 マイク・マイヤーズの「オースティン・パワーズ」(97年)の世界に近いものがある。60年代の“花形スパイ”がなぜか90年代に復活して悪の帝王と対決する徹底したナンセンスコメディー。面白がる人はハマるが(私もそうだが)、乗れない人はとてもついていけない。そういう系統の作品だ。

 「オースティン・パワーズ」を思い出したのは、70年代のサイケな雰囲気漂うファッションが共通していることもある。変身後のコスチュームの明るい色使いはもちろん、ハニーのセクシーな私服にも70年代風デザインがしっかりと取り込まれている。

 ハニーに変身の力を与える「Iシステム」を開発したのは彼女の父・如月博士であり、オジサマと呼ぶ宇津木博士はその後継者だ。というわけで、そのシステムを狙うナゾの秘密結社パンサークローがハニーと宇津木博士に襲いかかる。彼女とパンサークロー四天王(及川光博、片桐はいり、小日向しえ、新谷真弓―個性派そろいだよねえ)の対決、そして味方は警視庁公安課の秋夏子(市川実日子)と新聞記者の早見青児(村上淳)―この2人もいい味だしている―と乗ってしまえば楽しめるポイントは盛りだくさんだ。

 ノー天気ではあるが、なかなか友達のできない孤独なハニーに佐藤江梨子がハマっている。演技力というべきなんだろうが、ほおの上3分の2くらいがポコッと膨らんだ顔には寂しさがにじみやすい。典型例では浅丘ルリ子がそうだ(かなり勝手な思い込みかもしれないが)。

 そして、ハニーが超ミニで上半身をやや前傾した後ろ姿をかなりしつこくとらえたシーンが印象的だ。監督も好きだなあ、と思いながらもじいっと見入ってしまった。私も好きです、このアングル。というわけで、小学生の時に味わった「ハレンチ学園」の興奮をほんの少しだが、思い出した気がした。同じ実写化ものでも「CASSHERN」には乗れなかったが、今回はしっかりと楽しめた。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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