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裏CINEMA by相原斎
    2004/08/26 バックナンバーへ

印象に残る脇役キャラ

−イエスタデイ 沈黙の刻印(9月4日公開)−

 インターネットの関連ページで書き込みを覗いてみると、公開から18年経った今でも「エイリアン2」の女性兵士ヴァスケスは人気者である。私もヴァスケスに惚れてしまった1人だ。この作品の宣伝文句は「今度は戦争だ」だった。シガニー・ウィーバーふんする主人公リプリーが前作にもましてタフになっていたことは確かだが、彼女とともにエイリアンに正面から戦いを挑む“宇宙海兵隊”の印象は強烈であり、中でもヴァスケスは特別な存在だった。演じるジャネット・ゴールドスタインは60年、カリフォルニア州生まれ。「ヴァスケス」にイメージの定まらない人のためにいうならば、「ターミネーター2」(91年)ではジョン・コナーの義母役を演じている。

 「エイリアン2」の中でこの女性兵士は男勝りに重火器を操り、意固地だが、いったん相手を認めれば忠実に指示を守り、命懸けで取り組む。終盤、リプリーたちを守るために命を盾にするシーンは弁慶の最期をほうふつとさせた。やたらに強いが、1歩も2歩も下がったような印象があり、味方にすれば頼もしい。気の弱い男性にとっては魅力的な存在なのである。今作に登場する特殊捜査隊員メイに久々このヴァスケスのにおいを感じた。

 2020年、統一された朝鮮半島の1都市が舞台。政府に関わる科学者を標的にした連続誘拐殺人事件が起こり、ハイテク武装した“特殊捜査隊”が解明に当たる。それこそ戦争並みのドンパチを折り込んだポリスアクションである。メイ隊員は隊長のソクにほのかな思いを寄せながら体をはって事件解決に取り組む。

 演じているのは今作が映画デビューとなったキム・ソナ(28)。日本の公立中学、韓国学校高等部を卒業しているので日本語も堪能だ。米国の音楽大学でピアノを専攻し、在学中からモデルデビュー。帰国後もモデルとして活動していただけあって均整のとれたボディー。その上に松浦亜弥をちょっと怖くした顔をのせた感じだ。

 回し蹴りをするシーンでは「プレイガール」を思い出してしまったのだが、実はポーズがきっちりと決まるまで1シーンに3時間半を費やした入魂の映像である。銃撃シーンでは実際に破片が飛び散り、彼女のほおに刺さって流血。そのまま映画に使われている。異例のことである。唯一記憶に残っているのが「セーラー服と機関銃」(81年)で薬師丸ひろ子が同様にほおに傷を負ったケースである。この時は大騒ぎになり、PR上手の角川映画が「カイカ〜ン」のセリフを挿入したテレビCMでその映像をそのまま大量オンエアしたから、記憶している人も少なくないだろう。ソナは現地のインタビューでこの件を聞かれ「女なのに顔に傷なんて、胸が張り裂けるくらいショックでした」と語っているのだが、その「」の後に(笑い)と入っているところ、つまり冗談にしてしまうところに、役柄のイメージに重なる“豪快さ”をうかがわせる。これからが楽しみな存在だ。

 主演のソク隊長には「将軍の息子」(90年)で知られるキム・スンウ。相手役の女性犯罪分析官には「シュリ」(99年)のキム・ユンジンと文字通り韓国のトップスターを配した大作であり、事件の背後には国家的な陰謀が隠されている、というストーリーの奥行きもある。注目のキム・ソナにとってはかっこうのデビュー作となっている。メガホンは「ヘアドレッサー」(アン・ソンギ主演=95年)などで助監督を務めたチョン・ユンスで、これが監督デビュー作である。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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