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裏CINEMA by相原斎
    2004/11/18 バックナンバーへ

マゾッ気の入った注目の新作

−ハウルの動く城(11月20日公開)−

宮崎駿監督作品
風の谷のナウシカ 84年
天空の城ラピュタ 86年
となりのトトロ 88年
魔女の宅急便 89年
紅の豚 92年
もののけ姫 97年
千と千尋の神隠し 01年
ハウルの動く城 04年

 「千と千尋の神隠し」(01年)以来、待ちに待った宮崎駿作品である。その前作の「もののけ姫」(97年)と2作続いた和風テーストから今作の舞台設定は洋風である。ジブリ以降の宮崎監督作品を和風、洋風に区分してみると別表のようになる。

 そもそも宮崎アニメは多国籍風な背景で描かれ、大ざっぱに言えばすべて一つの範ちゅうにくくられてしまうのかもしれないが、やはり洋風と和風の2つの“匂い”に分けられるように思う。表から明らかなようにジブリ初期の作品はもっぱら洋風である。だから、高畑勲監督の「火垂るの墓」と2本立てで公開された「となりのトトロ」には新鮮さがあった。専門家筋の評価も高かった。だが一方で、興行的には宮崎アニメ史上もっとも失敗した作品でもあり、当時の一般ファンの間に違和感があったことは否めない。「もののけ−」「千と−」の大ヒットを経て、和風テーストがようやく広く認知されたということなのだろう。前置きが長くなったが、ようするに今作はジブリ初期の匂いを持った実に12年ぶりの“洋風”作品なのである。

 「愛国主義」が全盛の欧風の王国が舞台だ。市民の歓呼の中を兵士たちが戦地に赴いていく。美ぼうの青年魔法使いハウルはそんな空気から孤立するように巨大な「動く城」で暮らしていた。そんな彼のもとに「荒地の魔女」に呪いをかけられ、90歳の老女にされてしまった少女ソフィーがころがりこむ。異色のカップルの不思議な旅が始まる−。

 詳述は避けるが、物語の進行に従ってハウルの生い立ちや、戦争を終結させるための「闇の世界」での奮闘ぶりが明らかにされ、王室付きの強大な魔法使いサリマンとの対決へと展開していく。動く城を始め、アニメでしか表現できないスケール感、見どころ−やや反戦色が強すぎるようにも思えたが、宮崎作品ならでは充足感がある。

 それにしても今回の主人公カップルはマゾッ気の強いキャラクターだ。ソフィーはまるで“逆シャラポワ”ではないか。若さも美ぼうも力も、すべてを失ってしまう。ハウルは「幸福の王子」をほうふつとさせる。闇の世界で好戦的な勢力と戦うたびに傷つき、消耗していく。2人とも自ら払う犠牲をものともしないどころか、どこか楽しんでいるような雰囲気さえある。世情を反映しているのだろうか。終盤にかすかな光明が見えてくるまで、2人の道のりは厳しい。

 ハウルの声を担当した注目の木村拓哉は、中盤までは抑え気味の吹き込みで映像に溶け込もうとしているのが分かる。一方で、良し悪しは別にして終盤はすっかり本人の雰囲気が映像から浮き上がってくるように思えた。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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