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2004/12/23
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引き算の青春、そして「濡れた」
−インストール(12月25日公開)−
最年少で芥川賞を受賞した綿矢りさのデビュー作を19歳の上戸彩主演で描いた作品である。その若さには距離感がある。何かをやめることで自分であろうとする「引き算」の考え方は、私が頭に描く思春期のイメージには馴染まない。だが、いつの間にか“左右相称”の不思議な映像に目を奪われていた。
主人公の朝子(上戸)は可もなく不可もない17歳。制服が夏服に切り替わったある日、突然脱力して学校へ通うのを止めてしまう。彼女が捨てたパソコンを拾ったのが同じマンションに住む小学生かずよし(神木隆之介)で、それをインストールし直した彼はインターネット上で人妻風俗嬢になりすまし、エロチャットで小遣い稼ぎを始める。事情を知った朝子は彼が学校へ行っている午前10時から午後2時までの間、代わりにチャット上で人妻風俗嬢を演じることにしたのだが…。
チャット上で繰り広げられるバーチャル世界の映像化はもちろん、現実世界の描写も意図的な左右相称の構図で浮世離れした雰囲気になっている。
学校の時計台の中で朝子がボーイフレンド(中村七之助)と言葉を交わすシーンはいつも時計の文字盤を中央に左右同じ距離に彼女と彼が立っている。マンションの広場で朝子とかずよしが会うシーンは丸い池の左右からまるで測ったように2人がそれぞれ登場する。現実とバーチャルの境目が分からなくなるような、朝子から見れば現実もぼんやりとしたバーチャル世界と変わらないとでもいいたいような。ともあれ、現実もバーチャルも独特な不思議世界になっている。岩井俊二、本広克行らとともにフジテレビ系の深夜番組にブームを起こしたといわれる片岡Kは今作が映画デビューだが、それぞれのシーンのイメージ付けは巧みだ。
今風の冷めた感じにくるまれてはいるものの性への好奇心そのものは変わらずウェットに描かれている。SM、スカトロ趣味のチャット相手には適当に相づちをうっている朝子だが、自分のイメージにフィットするソフトな会話のやりとりには心ならずもうっとりとなる。パソコンの淡い光が潤んだ目を照らす。上戸の表情、ふっくらと、そしてくっきりと扁平ハート型を描く唇は怪しい空気をかもし出す。チャットを終えた後に朝子の心の中の声が画面にスーパーインポーズされる。「濡れた」。中年男にもグッとくる描写だった。他愛のないことで股間を硬くした10代の頃を思い出した。
セックスに限らず想像の世界は“鋭角的”になるものだ。現実を知れば知るほど、ものごとは迫力を失っていく。特に何事もバーチャル体験できるいまどきの10代が現実世界に魅力を見出せなくなっていくのも分からないでもない。だが、インストールとはパソコンの中身を更新することであって、決してその箱からはみ出ることはないこと、ようするにワクの決まった世界観ですべてが推移していくということ−この作品がいまどきの感じ方を適確に描いているからこそ、何やら寂しい。
そして自身のインストールを終えたように制服が冬服に切り替わったある日に朝子はまた学校に通い始める。結局、何となく予定調和である。そんなバランスのいい世界だからこそ「濡れた」のインパクトが際立ったのかもしれない。
(このコラムの更新は毎週木曜日です)
【相原斎】
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