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2004/12/30
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隠せば隠すほど
−スパイ・バウンド(1月29日公開)−
ウチの近くのドラッグストアでは特定商品に関しては黒い袋に入れてくれることになっている。要するに生理用品などの場合に中身が透けてみえないように、という配慮である。私の場合は養毛剤を買ってもこの黒い袋に入れられてしまう。店側はサービスのつもりなのだろうが、はっきり言って迷惑である。この店から黒い袋を下げて出てきたということは、何か人目をはばかるものを買いました、と宣言しているようなものだからだ。通常の白い袋でも、直射日光でもあてない限りそう簡単には透けて見えるものではない。よそ様のポリ袋をじっとながめて中身を確認する人はめったにいない。だが、いつもわりと混んでいるレジで、あえて「白い袋でけっこうです」と断るのも恥ずかしいので、結局今でもこの“黒い袋の屈辱”に耐えている。
前置きが長くなったが、隠せば隠すほど目立つことがある、ということだ。
今作で隠されて(押さえられて)いるのは「匂いたつような魅力」。持ち主はモニカ・ベルッチ(36)だ。本人がこの作品に臨むにあたって「今回初めて官能的な魅力を売り物にしない役と出会った」と語っていることからもわかるように、これまでの作品ではいずれもストレートに官能を押し出していた。今回はそれを押し隠すような設定だが、「黒い袋」に包んでも、やはりベルッチはベルッチである。
映画は85年に実際に起こった「虹の戦士号」爆破事件をモデルにしている。ニュージーランド海域で仏の核実験に抗議していたグリーンピースの船が爆破された事件で、直後に仏対外治安総局(DGSE)の男女諜報員が実行犯として逮捕された。今回は舞台をニュージーランドからモロッコ、設定をグリーンピース船から武器密輸船に置き換えてはいるが、実際のスパイの行動や思考は克明に描かれている。それもそのはずで、事件の当事者である女スパイ、ドミニク・プリウール大尉(当時)の証言に基づいて細部を再現しているのである。
DGSEの諜報員リザ(ベルッチ)は仲間のジョルジュ(ヴァンサン・カッセル)と架空の夫婦にふんしモロッコに潜入する。別動隊の3人とともに密輸船を爆破し、武器輸出を阻止するためだった。作戦は無事終了するが、帰国の際にリザはコカイン密輸の疑いで逮捕されてしまう。収容先の刑務所で彼女にある受刑囚を殺害させようというDGSEのもう一つのミッションであり、彼女の荷物にコカインをしのばせたのも組織の仕業だった。密輸船爆破を最後に引退を考えていたリザは動揺し、押さえがたい怒りを覚える。ジョルジュらと密かに連絡を取った彼女はDGSE上層部との無謀ともいえる戦いを開始する…。
女諜報員といえば女を武器に、と007の世界を連想するが、現実をなぞった今作はひたすら目立たないように、街に溶け込むように密かにミッションは遂行されていく。だが、黒いコートの襟を立てるほどに、さりげない動作をとるほどにベルッチの独特な目鼻立ちは際立つ。“匂い”の出口を小さくすればするほど、そこから出てくるものは濃くなるといような、そんな感覚である。「制服モノ」に普遍の人気があるのもきっと近いものがあるのだろう。
一部の水着シーンを除けばベルッチは徹底的に肌の露出を控えているが、刑務所での身体検査シーンだけは例外である。数秒間のことだから決して瞬きをしないように。
メガホンは今回が2度目という新鋭フレデリック・シェンデルフェール監督。
(このコラムの更新は毎週木曜日です)
【相原斎】
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