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裏CINEMA by相原斎
    2005/01/20 バックナンバーへ

輝きは演技の芯に

−レイクサイドマーダーケース(1月22日公開)−

 薬師丸ひろ子が中学受験生の母親役を演じるのだから隔世の感がある。私が駆け出し記者だったころに“セーラー服のもっとも似合う女優”だった彼女も40歳。あのころの輝きはきりっとぶれない演技力として実を結んでいるようである。

 14歳のときに「野生の証明」(78年)でデビュー。初めて取材した16歳のころにはすでに角川映画の看板女優になっていた。育ての親はいわずと知れた角川春樹プロデューサーである。人気のピークを迎えた「セーラー服と機関銃」(81年)の宣伝キャンペーンの最中のことだ。東京・銀座の東映本社でキャスト、スタッフが休憩しているとき、薬師丸本人を目の前に角川氏は「どうだ、ひろ子には後光がさしているだろう。私にはそれがはっきり見える」と言った。オーラがあるということなのだろうが、角川氏のように霊感のない私には当然光はみえない。だが、そんなこちらの困惑を見透かすようにケラケラ笑う17歳の薬師丸に何事も怖れない輝きを感じたことを鮮明に覚えている。

 91年に玉置浩二と電撃挙式。「きらきらひかる」(92年)「ナースコール」(93年)と個性の光る作品が続いたが、その後はナレーションやレポーターなどドキュメンタリー番組に関わることが多かった。女優として際立つ機会は少なかった。98年には玉置と離婚した。

 再び存在感を示すようになったのはTBSのテレビシリーズ「木更津キャッツアイ」(02年〜)だと思う。宮藤官九郎の脚本に踊る若者たちの強烈な個性に交じって決してぶれない。不思議な貫禄を感じさせた。

 で、今作の芯の強い母親役である。一人娘を名門中学に入れるという目標のためにひたすら突き進む設定だ。夫役の役所広司の自在な演技もしっかりと受けとめている。堂々とした空気に安心感がある。合唱団的なソプラノボイスに厚みが加わって鼻にかかる感じが無くなった。外見の変化の少ない人だが、体内から自然と年輪が染み出してくるようだ。

 映画は東野圭吾のミステリー小説「レイクサイド」を原作に名門中学受験を控えた3家族が勉強合宿で集った湖畔の別荘を舞台に殺人事件と意外な結末が描かれる。金八先生シリーズの翔んだカップル、鶴見辰吾と杉田かおるが夫婦役で登場するのもご愛嬌だが、同じ受験生を持つ母親同士として薬師丸と杉田の実に自然なやりとりにも注目して欲しい。あまり知られていないが、同世代の2人はやはり同年の荻野目慶子とともに10代のころから親交があった。

 これも不思議な符合だと思う。薬師丸は映画で、杉田はテレビドラマで、荻野目は舞台でともに早熟といえる能力を示し、それぞれにレベルは違うが不振な時期を経て復活を果たしている。3人に限って言えばもっとも輝いた時期の記憶が自信となり、女優としての芯となっているのだろう。

 「EUREKA」(00年)で注目された青山真治監督が初めてミステリーを手掛けた今作は光と青と茶の色使いが印象に残る。ほかに豊川悦史、柄本明、黒田福美、眞野裕子が出演。キャストもしっくりとはまっている。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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