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裏CINEMA by相原斎
    2005/08/04 バックナンバーへ

今そこにある怖さ

−七人の弔(8月13日公開)−

 暗いニュースの中でもとびきり後味の悪いのが「児童虐待」だ。抵抗できない者に向けられる暴力。それでも依存せざるを得ない子供たちは親の顔色をうかがい、報われない愛情さえ示す。いたたまれない状況である。

 たけし軍団でスタートを切り、俳優、脚本家と幅を広げてきたダンカン(46)は、初監督作品の題材にあえてこの「児童虐待」を選んだ。

 7組の親子が集う2泊3日のキャンプが舞台だ。子供たちを妙に気遣う親たち、その親の態度に戸惑いを隠せない子供たち。リラックスしていい場所に緊張感が漂っている。さりげない仕草に得体の知れない背景を透けて見せるのが得意な「俳優ダンカン」の持ち味がそのまま演出にも活かされている。

 実は親たちは虐待常習者。彼らにとっては邪魔者でしかない子供たちの臓器を闇組織に売り渡そうというとんでもない合宿なのだ。子供たちの健康状態がチェックされ、2日目の夕食には睡眠薬が盛られてそのまま組織に引き渡される段取りである。だから、親たちは日常とはうって変わって優しく、体調を気遣う。

 ギャンブル、新興宗教、再婚、愛人、子だくさん…虐待や合宿参加の動機はそれぞれだが、ひと言でいえば身勝手である。また、情状酌量のほんのわずかな余地の部分では確かに温度差があり、それが後半のそれぞれの微妙な家族模様に関わってくる。

 子供たちの年長者は15歳。当然のように親たちの不自然な言動をいぶかる。次第に団結し始める子供たちは、親たちの目を盗んで真相を探り、やがて反撃に転じていく。

 社会問題を題材にした劇映画は近年ますます作りづらくなっていると思う。めまぐるしい社会情勢の変化で、企画から公開までの数カ月から数年の間に「古いテーマ」になってしまう可能性が高いし、激しすぎる現実のほうがよほどドラマチックでいくら作り込んでもドキュメンタリーにはかなわないケースも少なくない。

 その点、時間を追うごとに顕在化しつつあり、普遍的な親子関係に関わる今作の題材はもっとも映画的といえるのかもしれない。それを臓器売買合宿というかなり強引な設定に押し込みながら、一定のリアリティーを持たせたところがダンカン監督の手腕なのだと思う。自らふんした合宿のコンダクター、渡辺いっけい、高橋ひとみ、温水洋一ら親たち−本来どうしようもない悪人のはずなのにどこか憎みきれない人間味をそれぞれにじませている。

 終盤の子供たちの反撃も、闇組織の巨悪に向かうのではなく、むしろその力を利用して活路を見出していくところが“現実味のあるリベンジ”となっている。子供たちのたくましさ、いびつな親たちの哀しさ…これほどブラックな題材を取り上げながら、後味は不思議なほど悪くない。

 ちなみに内容とはリンクしないが、「とりあえずタイトルを決めちゃってから始めた」(ダンカン)というネーミングは、もちろん黒沢明監督の「七人の侍」のパロディーである。

(このコラムの更新は毎週木曜日です)

【相原斎】

プロフィル
相原斎の写真 ◆相原 斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。80年入社。文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長を経て現在編集局次長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。
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