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千歳香奈子の「ハリウッド直送便」
    2004/10/26 バックナンバーへ

予想外のブーム「ジャパニーズ・ホラー」

 「ジャパニーズ・ホラー」ブームに沸くハリウッドで、またまた日本のホラー映画が新たな記録を作りました。22日に全米公開されたハリウッド版「The Juon/呪怨」が、公開3日間でなんと4000万ドルの興行収入を記録してハリウッドの業界人たちを驚かせたのです。

 「(3日間で)2000万ドル稼げれば万々歳」と配給元のソニー・ピクチャーズ幹部が語っていたのですが、ふたを開けてみればその倍となる成績でボックスオフィス1位に輝いたのですから、それも当然でしょう。2年前にヒットしたハリウッド版「ザ・リング」ですら、公開10日間で3900万ドルの興行収入だったのですから、「呪怨」の成績は大健闘です。米国ではハロウィーン前のこの時期、ホラー映画がはやる傾向にありますが、それでも「ジャパニーズ・ホラー」がハリウッドでここまでうけるとは正直言って予想外でした。

 というのも、「呪怨」を見ていて気付いたことなのですが、「恐怖」に対する米国人と日本人の感覚がまったく違うからです。それは2年前に「ザ・リング」を見た時にも感じた違和感に共通しています。怖いはずなのに、周囲の観客はなぜか笑う。こちらが、恐怖に肩をこわばらせ、手を握りしめながら恐る恐る見ているのに、米国人は大声で笑っているのです。絶対に笑うはずのない場面で。

 淀む黒い影。天井裏をうごめく女の霊。「あー、ドアを開けてはだめ。出てくる!」と心の中で1人叫びながら恐怖と戦っていると、必ずそこで笑いが起きるのです。そう言えば「ザ・リング」でもテレビ画面から貞子が出てくるシーンで笑いが起きたなあ…などと思い出し、久々にカルチャーショックを受けました。

 そして日本のホラーとハリウッドのホラーでは、決定的な違いがあることに気付きました。「見えない相手」「怨念」「祟り」など、背筋が凍るような感覚的な怖さを綿密なストーリーで仕立てて、観客の恐怖心をジワジワとあおる日本のホラー映画に対し、ハリウッドでは「悪霊」「ゾンビ」「エグイ」と言った単純で目に見える視覚的なものが多いということです。

 日本のホラー映画を見た後は必ず、1人で車を運転しているとき、バックミラーに何か写ったらどうしようと怖くなったり、家で夜中に鏡を見ることができなかったり…。そういう恐怖心は米国人には理解ができないようです。

 それは米国人は単純明快なものが好きという文化的違いだけでなく、宗教的な違いも大いに関係があるのでは。キリスト教徒が多い米国では、神に逆らって呪われるというような「悪霊」をもっとも恐れる向きがあり、また葬儀の違いから土葬が一般的な米国では「ゾンビ」なるものが存在し、そこに恐怖を感じるのでしょう。

 だから日本人の私が、いかにも作り物っぽいゾンビや緑色をしたわけの分からない物体が体内から吹き出る場面を見てもあまり怖いと感じないけど、米国人はそれを見て「ギャー」と叫ぶ。でも、逆に「呪怨」のような感覚的なものでは、目に見えない何かが出てくるまでの恐怖心がないため、それが画面に現れた時には「おー、やっと出てきたか」という感覚と、ゾンビとは明らかに違う幽霊のたたずまいに笑いが起きるのだと、妙に納得をしてしまいました。

 だから、日本の家屋が舞台で、日本人親子の霊がストーリーの鍵を握るこの作品が、ハリウッドで公開直後にこれだけヒットしたことに、改めて大きな衝撃を受けたのです。

 そうは言っても、「ザ・リング」のヒットで2匹目のどじょうを狙うハリウッドでは今、「ジャパニーズ・ホラー」が多いに注目されています。来年には「ザ・リング2」「仄暗い水の底から」のリメーク版が公開を予定していますし、「カオス」「回路」「女優霊」などもリメーク準備が進められています。この「呪怨」のヒットで、今後はアニメに続いて「ジャパニーズ・ホラー」がハリウッドの新たなジャンルとして定着し、日本ホラーの本当の怖さが米国人にも認識される日もそう遠くはないのかもしれません。

(このコラムの更新は毎週火曜日です)

【千歳香奈子】

プロフィル
千歳香奈子 ◆千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
 1972年3月29日 札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。独身。
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