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nikkan the CINEMA
またの日の知華


出演: 吉本多香美、田中実、渡辺真起子、田辺誠一、金久美子、小谷嘉一、桃井かおり、夏八木勲、吉岡秀隆
監督・企画: 原一男
製作・脚本: 小林佐智子
配給: ユーロスペース
上映時間: 1時間54分
公開日: 1月15日(土)よりシネマスクエアとうきゅう他ロードショー

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<< STORY >>

 <第1章 知華と良雄> 60年安保闘争で身も心も傷ついた元機動隊員の良雄(田中実)は、郷里の新潟に戻って兄の仕事を手伝っていた。そんな良雄にとって従妹の知華(吉本多香美)は、いつも眩しい存在だった。東京の体育大学で学ぶ知華が、久しぶりに帰郷した。知華は、母リエの不義の子であることから、良雄と自分が実の兄妹ではないかという妄想にとらわれていた。大会中の事故がもとで体操選手への夢を諦め、中学校の体育教師になる決心をした知華は、良雄に再度の状況を促し、2人は結婚する。1969年1月、全共闘運動に揺れる東京で、知華は純一を出産する。教師として、母として、妻として、懸命に生きようとする知華。そんな矢先、良雄が結核と診断され、入院を余儀なくさせる。

 <第2章 知華と和也> 良雄が療養所に入所中、郷里の母校に勤める知華(渡辺真起子)に、新任の体育教師、和也(田辺誠一)が接近してくる。少女時代の知華の後援者だった和也の亡父法事の夜、百八灯祭に案内した後、和也は知華に父の8ミリフィルムを見せる。60年全日本体操女子選手権大会、平均台で着地に失敗し、落下する知華…。和也はその映像を初めて見たときから知華に焦がれていた。和也に求められ、知華は夫の留守に耐える妻の殻を脱ぎ捨てて、性の悦びに浸る。1972年正月、良雄が自宅療養を許されて帰ってくる。和也との仲が噂になり、退職届を出した日の夜、知華は嫉妬に駆られた和也に呼び出され、モーテルへ行く。良雄は無言で送り出し、テレビを点ける。連合軍あさま山荘事件が映し出される。

 <第3章 知華と幸次> 知華の教え子だった幸次(小谷嘉一)は、姉の率いるアナーキーなゲリラグループ、ALFOこと動物解放戦線に属していた。夜の東京で過激派に襲われた幸次を偶然、知華(金久美子)が助ける。かつて、生意気な転校生だった幸次を暴力的な男性教師からかばったのも知華だった。その知華は教師を辞めた後、借金取りに追われるように上京していた。レズビアンの姉に複雑な思いを抱きつつ、知華を慕う幸次。和也から手切れ金を渡された知華は、アジトを襲撃されて行き場を失った幸次と豊川へ行き、彼の祖母の元に身を寄せる。1974年8月、手筒花火の大役をやりとげた幸次は、東京・丸の内での過激派による爆破事件に衝撃を受ける。その夜、知華と結ばれる幸次。しかし、2人で南の島へ旅立とうとしたとき、姉が迎えに来る。

 <第4章 知華と瀬川> 流れ者の瀬川(夏八木勲)は、場末のスタンドバーで働く知華(桃井かおり)と出会い、一夜の客となる。女を刺した前科のある瀬川と深い仲になってゆく知華。その一方で和也との生活も続いていた。小学生になった純一が新潟から訪ねてくるたびに、知華はどちらかの男と束の間の家族の時を過ごすようになる。瀬川は、自分が預けていた金を使い込んでしまった知華を、遠い旅に誘う。坂田から船でたどり着いた先は、日本界に浮かぶ瀬川の故郷、飛鳥。瀬川が朽ち果てた成果を訪れている間に、知華は純一に電話をかけ、「一緒に暮らそう」と言う。しかし、電話の向こうからは、つれない返事が帰ってくる。岸壁の上で瀬川と戯れる知華…。夕日が海を赤く染めていく。

 <エピローグ 知華と純一> 成人した純一(吉岡秀隆)は飛鳥を訪れ、公衆電話ボックスを見つける。あのとき届かなかった、母への思いが蘇る…。

<< INTRODUCTION >>

 国内はもとより、世界でも最も尊敬されているドキュメンタリー監督の1人、原一男が劇映画に挑戦! 製作発表時から大きな話題を呼び、完成が待ち望まれていた作品、それが「またの日の知華」だ。70年代にデビューして以来、ドキュメンタリーの可能性を独自に追求し、1作ごとに新たな地平を切り開いてきた原監督は、特に「ゆきゆきて、神軍」で過激なアナーキスト奥崎謙三、「全身小説家」では虚構を生きた小説家井上光晴と、強烈な個性を持つ人物に迫り、ドキュメンタリー映画として異例の大ヒットを記録、国内外の数々の賞に輝いた。「ドキュメンタリーは虚構である」と常々語ってきた原監督。初めて挑んだ劇映画で一体どんな世界をみせてくれるのか−。

 飽くなき挑戦を続ける原監督は、ヒロインの知華と4人の男たちとの愛を4つの章に分けて描いたこの作品に、おそらく世界でも例のない画期的な仕掛けを施した。「男たちから見たヒロインは、それぞれ違って見えるはず」という観点から、1人のヒロインを4人の女優に演じさせているのだ。時代は70年代。東京で希望に満ちた結婚生活を送っていた体育教師の知華。夫の病気をきっかけに郷里の母校に移り、そこで同僚と愛人関係になる知華。仕事も家庭も失って単身上京し、再会した教え子と再び東京を離れる知華。そして場末のバーで流れ者の男と出会う知華…。わずか数年の間にめまぐるしく移動・変貌し、4人分の人生を生きたかのようなヒロインを描くのに、顔も個性もまったく異なる4人の女優を起用する。まさに原監督ならではの意表をついたアイデアではないか!

 政治からファッションまで、あらゆる分野で変革が叫ばれた60年代。それに続く70年代は、大阪万博と三島由紀夫の割腹自殺で幕を開けたことに象徴されるように、輝かしい高度経済成長の陰でさまざまな社会問題が噴出した激動の時代だった。そんな時代に青春を過ごした1人として、原一男は同性代のもつ希望、愛、自由というモチベーションが、絶望、裏切り、孤独という代償を伴うことを肌身で知りながら、知華という女を描いた。1人の女の生きざまを通して、自分にとっての70年代を検証しようと試みたのかもしれない。

 知華を演じるのは第1章から順に、「皆月」の吉本多香美、「M/OTHER」の渡辺真起子、演劇界で圧倒的な人気を誇る金久美子、そして桃井かおり。相手役は「草の乱」の田中実、「ハッシュ!」の田辺誠一、TV「仮面ライダーアギト」の小谷嘉一、「ホタル」の夏八木勲。またエピローグに登場する5人目の男、知華の息子に「隠し剣 鬼の爪」の吉岡秀隆。脚本・製作は原監督の長年のパートナー、小林佐智子。撮影は「11’09’01セプテンバー11」(今村昌平編)の岡雅一、照明(第3章・4章)は「カンゾー先生」の山川英明、録音は「皆月」の西岡正己、編集は「ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」で原一男監督と組んだ鍋島惇、美術は「アンラッキー・モンキー」の大場勇人、音楽は「ROAD」など数々の舞台音楽で知られる上田亨。実力ある充実したスタッフ陣である。

 この作品は、企画から脚本完成まで紆余曲折の長い道のりを経て00年春に正式にクランクインしたが、半分ほど撮り終えたところで資金難に陥り、中断を余儀なくされた。しかし映画人やファンによる「『またの日の知華』を応援する会」にも支えられて03年夏に撮影再開、ついに完成をみた。多くの人の情熱が込められた、記念すべき作品でもある。


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