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映画評

    2003/08/08 バックナンバーへ

“1人”の犬…涙止まらず

「さよなら、クロ」(日)

 60年代、長野県・松本市の高校に迷い込んできた野良犬「クロ」。学校の名物犬として10年以上も住みつき、木村亮介(妻夫木聡)には獣医になる夢を、自殺を図ろうとした五十嵐雪子(伊藤歩)には生きる勇気を与えた。1匹の野良犬が、受験、就職、恋愛などの悩みを抱えた思春期の高校生の支えとなっていく。彼らにとってクロは「ペット」ではなく「親友」とでも呼びべき存在だった。

 驚くべきは「クロ」が作品の中で、出演する俳優たちと同等の立場で描かれているという点。単なる人間のペットとしての扱いではなく、1人(匹?)の生徒、職員であるかのようにストーリーに絡んでいく。クロと触れ合うことで、若者たちが人生にとって大事な何かを見つけていく。あくまで「動物」を主人公として登場させたこれまでの動物映画とは一線を画した作品に仕上がっている。クロの切なさだけにクローズアップするのではなく、周りにいる若者の切なさを感じさせる成長過程も同等に描いている。クロの死と引き換えに、ようやく実を結んだ亮介と雪子のラブロマンス。流した涙の量も倍になった。公開中。

(このコラムの更新は毎週土曜日です)

【大越慈】
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