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映画評

    2004/01/24 バックナンバーへ

生きることの大切さとは…

「解夏」(日)

 「僕の目になってほしい」。ベーチェット病にかかり、徐々に視力を失っていく主人公隆之(大沢たかお)が恋人の陽子(石田ゆり子)に投げかけたこの言葉に胸を打たれた。

 病気が発覚した当初は陽子を思うがために別れを決意する隆之だが、それでも陽子は彼を支え続けようとする。決して弱気になって出た言葉じゃない。男としてのプライドもかなぐり捨て、たとえ目が見えなくなっても最愛の恋人とともに生きていこうとする強い意志が感じられる言葉だ。

 2人の姿には「切なさ」は感じられない。2人がまさに手と手を取り合って懸命に生きていく姿はまぶしくさえ映る。陽子が見せる笑顔が隆之の生きる勇気となっているのだ。こんな2人の関係がうらやましく思えた。

 原作さだまさしの故郷長崎が舞台になっている。異国情緒あふれる街並み、丘から見下ろした海、オランダ坂に代表される坂の数々。視力を失いつつある隆之が急な石畳の坂を1歩づつ確かめるように歩いていくシーンは、その息遣いが心にしみ入る。都会の平たんなアスファルトの上では伝えきれないシーンだ。

 この映画を見た人は「泣ける」と言う。劇場でも観客がハンカチで目を覆う姿が目についた。でも泣けなかった。泣きたい気持ち以上に、生きることの大切さを教えられた。

(このコラムの更新は毎週土曜日です)

【大越慈】
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