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映画評

    2004/12/18 バックナンバーへ

ひりひり、冷え冷え…人間関係

「レディ・ジョーカー」(日)

 友情も家族愛も、仲間意識もありません。ひりひりするような人間関係だけです。「レディ・ジョーカー」たち、刑事たち、会社幹部たち。ちょっと指でつつけば、ガラガラと崩壊するか、内部から爆発するか、そんな関係ばかりです。実際に崩壊してゆく関係もあります。癒し? 純愛? 涙ほろり? そんなのごろごろ転がっていないのが本当のところだと思っているので、このひりひり、冷え冷えした人間関係が、より現実に近そうに思えるのです。

 その寒々とした雰囲気は冒頭から出ています。戦後すぐの東北の村に、吹雪の中を「日之出」というビール会社を解雇された青年が帰ってくるのです。食いぶちが増えて迷惑そうな顔をする家族の前で、彼はリュックからビールを取り出します。さぞ、寒かろう、冷たかろうに…。ビールの冷たさは会社、家族の冷たさで、それが約50年の時を経ても、冷え冷えと横たわっている、そんな雰囲気です。

 どこに感情移入していいのか、正直迷うかもしれません。登場人物たちが、何を求めて生きているかが、よく分からないのです。寂しいという人も、目立ちたいという人もいないのです。感情を押し込めて、黙々としているか、自分だけを見ている人ばかりです。でも、やはり、これが現実に近いのではと思うのです。

 「レディ−」の物井(渡哲也)と陽吉(加藤晴彦)、レディ(斉藤千晃)の関係だけは、もろくても、少し温かそうです、劇的感動があるわけではないですが、これくらいで十分。ベタベタに飽きた人はどうぞ。

(このコラムの更新は毎週土曜日です)

【小林千穂】
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