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映画評

    2005/04/09 バックナンバーへ

涙誘うビターな味付け大人系

「コーラス」(仏)

 「フランスの8人に1人が泣いた」という宣伝コピーのまんま、恥ずかしながら導入部から泣いてしまった。

 パブロフの犬状態。つまり条件反射ですな。ジャック・ペランの顔を見ただけで涙腺がゆるむ。それ誰や? 「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストで、検閲フィルムをつなぎ合わせたキスシーンを見てむせび泣いていた「トト少年成長後役」のオジサンだ。死ぬ前に見る最後の映画を1本挙げろと問われれば、私はこの感傷過剰イタリア産名画を迷わず選ぶ。

 ことごとく、あの映画と符合するのだ。ノスタルジックなプロローグ。葬式で帰郷する成功した男。何十年ぶりの再会。恩師の遺品。少年時代の追憶。貧困。戦争の影。カワユイ子供を使って泣かせようという見え見えの魂胆。主人公の成長後を演じるジャック・ペラン…。のっけからパブロフ犬になるはずである。

 片田舎の寄宿舎になかば「捨てられた」少年たちと、さえない音楽教師のココロの交流。駄目生徒を音楽で再生させる構図は「スクール・オブ・ロック」(未見の方はDVDで)と同じ。昨年のNO・1映画を選べと問われれば、私はこの米国産痛快感涙作を迷わず選ぶ。またまたパブロフの犬状態なのである。

 3作を比べて面白いのはお国柄が出るところだ。ベタな熱血系イタリア産と、自己主張全開なオレさま系米国産に対し、フランス産の本作はビターな味付け大人系。敵役の少年は最後まで更生しないし、クライマックスもさりげなく奥ゆかしい。そこがまた、涙を誘うんだな。ウッ、思い出しただけで…。パブロフ犬映画がまた増えてしまった。ワン! ワン!

(このコラムの更新は毎週土曜日です)

【高田博之】
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