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映画評

    2005/07/09 バックナンバーへ

オヤジは勇気づけられる

「フライ,ダディ,フライ」(日)

 まず、この映画の効能から。(1)バスをやり過ごして歩きたくなる(2)高い木に登りたくなる(3)「燃えよドラゴン」を久しぶりに見たくなる(4)夏の暑さが快く感じるようになる(5)ジェットコースターに乗って風を切りたくなる(6)子供のころのように深く深く眠れるようになる。

 娘をキズモノにされて黙ってられるか。ごくフツーのサラリーマンが、無敵の在日朝鮮人少年に鍛えられて、拳闘高校王者にタイマン勝負を挑む。「飛べ、オヤジ、飛べ」。赤面しちゃう青くさいメッセージが、心も体も汗をかくことが少なくなったオヤジ真っただ中の私(まだ38だけど)の背中をポンッと押してくれた。

 これまた傑作な原作シリーズ(「レヴォリューションNO・3」)の中で、主人公の高校生が口にする箴(しん)言。「幸せとは欲望が停止し、苦痛が消滅する負の状態である」。まぁこのへんでと限界を決めてしまう。上司の言ってることは納得できないけれど、我を張れば先に進まないからな。負の状態であるけれど幸福な日常…。本作のナイスな登場人物たちは、それを認めない。ジャスト2時間のどこを切り取っても、楽しむ欲望に限界がない。「前向きな不幸せ」の金太郎アメ。

 オヤジ役の堤真一がいい。原作のイメージより二枚目すぎるが、情けないオヤジっぷりにビシビシ共感。クライマックスの決闘シーンは「ロッキー」に(及ばないまでも)通じるカタルシス。岡田准一(同じく二枚目度過多)演じる在日少年との擬似親子関係だけはジメッとして気に入らないが、暑くてやってられない外回りを、映画館で涼むべく、ちょっとさぼって見るにはふさわしいカラッとしたオヤジ応援映画。勇気づけられるぞ。

(このコラムの更新は毎週土曜日です)

【高田博之】
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