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映画評

    2005/11/12 バックナンバーへ

組み立てられないたけしと武

「TAKESHIS’」(日)

 以前にたけしからこんなことを聞いた。「芸人として、笑ってもらおうとみんなに媚(こ)びているところもあるから、せめて映画ぐらい好きなようにさせてよって」。その言葉のままの映画といっていい。

 お笑いスターで、著名な映画監督という今の自分を主人公に据えた。自分で自分を撮る。これってスター監督だから成立する芸当。普通の映画監督にはできないし、やろうとも思わないだろう。

 冒頭、スターのイメージの再現が続く。尊大な態度をとるたけし。ドキュメンタリーのように感じる人もいるはずだ。そんなたけしが偶然、自分とそっくりな売れない芸人に出会う。あり得ない。ところが、流れもあって自然に入り込んでしまう。

 直後にたけしは、夢を見始める。ここからぶっ飛び始める。当たり前だ。だって夢なんだもん。唐突な出来事の連続。現実世界で付き合っている人たちが、立場や姿を変えて何度も出現する。理解不能な言動が繰り返される。

 事態は複雑化する。たけしが見ている夢のはずが、売れない芸人の武の現実世界の行動も合わせて見せられていく。たけしが武の生活を想像した映像にも見える。すると今度は、たけしにあこがれる武が見ている夢も登場。2人が見る奇想天外な夢の羅列。時間の流れも一切無視。ストーリーで映画を見る人は、つじつまが合わないといって、ここでギブアップするはずだ。

 まだメカニズムが解明されていない「夢」という難解なモノを使った、たけしの挑戦状だ。映画を見ながら、自分でもう1つの映画を組み立てる。パズル映画といってもいいが、組み立ての説明書はない。クライマックスで「感動」というカタルシスも与えてくれない。見終わった後「さあ、どうする」とニヤリと笑うたけしの顔が浮かんだ。

(このコラムの更新は毎週土曜日です)

【松田秀彦】
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