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2003.04.20付紙面より
熱いんだよね 妻夫木聡
ひたむきという言葉が似合う。妻夫木聡(22)。4月から連続ドラマに初主演し、今後、4本の主演映画が公開予定という、最も旬な俳優の1人である。女性誌で「セクシーな男」「癒やされたい男」の上位にランクされるが、そんな“イマドキ”のルックスとは裏腹に内面を重視する。ポリシーを持った俳優である。
写真=男の私から見ても素直に「よっ! 男前!」と言える、まさに正統派の二枚目と思いました。そんな妻夫木聡からじっくり見つめられての写真撮影。開始早々、額から汗がどんどん、湯水のように流れてきました。「ストロボついてませんけど、大丈夫ですか?」の声に、今度は背中からも大量の汗が…。妻夫木聡の目に、大汗をかきながらドタバタと撮影を続ける35歳の独身男(私)が、どう映ったのか? それを考えると、また汗が出てきました。=撮影・鈴木豊
600万部の重圧
4月からスタートしたTBSドラマ「ブラックジャックによろしく」(金曜午後10時)で研修医・斉藤英二郎を演じている。ひたむきさを持ったキャラクターで、医療現場が抱える矛盾や問題に直面し、苦悩しながらも、敢然と立ち向かっていく。
原作は02年1月から「週刊モーニング」(講談社)で連載が始まった同名コミック(作・佐藤秀峰)。同年6月に単行本第1巻が発売され、今月22日発売予定の5巻で、青年誌史上最速で600万部を達成するという。
この人気コミックが、自身の連続ドラマ初主演作となれば不安も大きいはず。漫画の斎藤英二郎イコール妻夫木聡というイメージが生まれるからだ。
妻夫木 自分にできるのかなというプレッシャーはありましたよ。「ブラック−」という漫画のイメージは人それぞれ違うと思う。だけど、漫画で伝えたいものを、ちゃんとドラマでも伝えられたらそれでいいんじゃないかな。反町隆史さんが「GTO」をやったとき、まだ僕は素人で「格好良すぎないかな」って思った。でも、よくよく見てたら「全然おもしろいじゃん」って。漫画は漫画のよさ、ドラマはドラマのよさがちゃんとある。
同ドラマには、豪華キャストがそろった。ヒロイン役のカオリには鈴木京香(34)研修医仲間の出久根役は極楽とんぼの加藤浩次(33)。ほかに緒形拳、伊東四朗、泉ピン子、三浦友和、国仲涼子ら主役級の共演陣が顔をそろえる。
妻夫木 京香さんはせりふに重みがあって、存在感がある。加藤さんは不思議な魅力がある。現場を楽しませてくれるんですけど、演技しているときはその場の雰囲気に溶け込んじゃってる。テクニックじゃなくて、感性の問題だと思うんですけれど。演出の平野(俊一)さんもすごい熱い人なんです。僕、熱い人が大好きなんです。英二郎も熱い役。いろいろな“熱”がうまい具合に重なり合って、いい作品になっていると思います。
たまたま合格
本人も熱く語る人だが、もともと俳優になりたかったわけではない。高校時代はバンドをやっていたが、仕事に、とは思わなかった。やりたいものがなく、ないからやりたいことが分からず、ただ普通に遊んでいた。97年、ホリプロ主催の「第1回超ビッグオーディション」でグランプリを獲得したのも偶然だった。
妻夫木 学校へはちゃんと行っていたけど、遊びまくっていましたね。たまたまゲームセンターに、オーディション用のプリクラみたいな機械があって、やってみたら合格って出てきた。それを送ってみたら、いつの間にかグランプリになって、事務所に入ったら、俳優になってた。
楽にお金を稼げて、いい車に乗って、女もいて…。妻夫木にとっての芸能界はそんなイメージだった。
妻夫木 入ってみて、俳優さんがみんな演技してるから、だれにでもできるんだろと思っていたら、その全く逆。自分が何もできなくて、悔しくて、恥ずかしくて、最悪な自分がいた。自分の無力さを感じましたよ。次から「何だ!この野郎」「絶対いいものを残してやる!」って思ってやっていたら、いつの間にか俳優が好きになっていましたね。きっと恋愛と同じで、人を好きになる瞬間って分からないじゃないですか。「あれっ、この人のこといつから好きになったんだろう」って。どこが好きって、顔だけじゃないし、全部が好きみたいな。俳優という仕事を見つけたことは、一生ものだと思っています。僕の場合、完ぺきに“運”だけど、やって言えることじゃないですか。1回ガツンとやられてもあきらめない。辞めないことじゃないですか。
語っていることは、普通のことだ。ただ聞く者に「そういえば、オレも何も考えず大学に入り、社会人になり、いまがあるのだろうな。頑張らないと」と思わせる。きっと、妻夫木聡という男の素直で、飾らない心が、言葉に熱い説得力を持たせているのだろう。
本音ぶつける
俳優としてクローズアップされた初主演映画「ウォーターボーイズ」(01年)でも、そんな“熱さ”が出ていた。国内で唯一、男子シンクロ部がある埼玉・川越高をモデルに、さえなかった男子水泳部員たちがカッコイイ演技を見せるために初体験のシンクロに悪戦苦闘する姿をコミカルに描いた。シンクロに魅せられ、仲間を引きずり込んで、一生懸命シンクロに取り組む高校生を好演した。
妻夫木 自分をリーダー的存在だとは思っていません。みんな一緒のことをやっているんだったら、だれがえらいというわけでもない。みんながリーダーと思って、本音をぶつけ合わないと。単純に考えて、いいものにいいもの足していけば、もっといいものができるじゃないですか。そういうのが好きなんです。
とはいうものの、言わなければいけない時はガツンと言う。同映画のロケでは、最年長がリーダーと決めていた。ところが、本番前日のミーティングの時、リーダーが「ゴミ当番を決めよう」と言い出した。本番前のピリピリムードが漂っていた。俳優として無性に腹が立った。
妻夫木 そんなこと言うためのミーティングだったら、明日のことに集中しようぜ、ってことを言っただけです。(学級委員とか)絶対に関わらないタイプで、やりたくないんだけど、そこは違うなって思ったら、意見をポンといって、さっさと逃げてという感じですね(笑い)。ただ、あの時は、みんなから「あれはよかった」って。
内面出す仕事
新世代の“イイ男”として女性を中心に高い支持を得ている。雑誌「anan」の03年「好きな男」ベスト10にランクインし、「セクシーな男」「癒されたい男」ではトップ5にそれぞれ入った。
妻夫木 「笑顔がすごくいい」とか言われたりするけど、意識してやっていることではないんで。(俳優を)好きでやっていて、その気持ちを出していきたいと思ってやっているから、そんな反応が返ってくるんじゃないですか。
格好いいからファンがつくとは思っていない。人間の格好良さとは「内面」だと信じている。
妻夫木 外見だったら何とかできるじゃないですか。整形もあるし。でも、それって作られたもの。人間としての格好良さは、内面から浮き出るものと思うんです。照明さんやカメラさんが「ここは、おまえ、こうだろう!」ってこだわりを持っているのを見ると「いいな」って思う。内から出てくるものには勝てない。ファッションでも、シンプルだけど、ここだけは譲れないっていうこだわりがあれば、すごくすてきだし、自信も出てくるのではないでしょうか。
今後も型にはめられず、「ブラックジャック−」のような役はもちろん、悪役、へなちょこ役もやっていきたい、という。
妻夫木 俳優って、周りからこうした方がいいよって言われて、じゃそうしよう、ってやるものじゃないでしょう。格好良くなくても、妻夫木聡という俳優がいると思われれば、僕はそれでいい。他人の意見ばかりに左右されずに、やっていきたい。
今後、4本の主演映画が公開を控えている。注目作はアクション映画「ドラゴンヘッド」(飯田譲治監督、8月30日公開予定)。02年10月にウズベキスタンでロケが行われ、火薬2600グラム、ガソリン80リットルを使用した爆破シーンは圧巻だ。
多忙を極めるが、今は「ブラックジャック−」に全力投球している。事務所には、どんなことがあっても、仕事が重ならないことを守ってほしい、とお願いしている。
妻夫木 違う作品や次の作品のことを考えたり、これからのことどうしようとか考えたら、変な欲が出てくる。毎回違う作品をやっているけど、その時が1番だと思ってやっています。休み、ですか? あったら台本を読んでいます。休みの日に読まないと時間がないので。
一生懸命、生きている人ですね 漫画「ブラッジャックによろしく」の原作者・佐藤秀峰氏 主演映画「ウォーターボーイズ」を見ましたが、苦しんで、悩んで、いろいろ考えて、壁を乗り越えようとする姿が印象的。とても自然で、演技しているようには見えなかった。演技ではなく、元来のキャラクターで勝負していたのでは。一生懸命、生きている人だと思いました。悩みながらも立ち向かっていく姿は「ブラック−」の主人公・斉藤英二郎にも重なりますね。今回、演じていただくことになりましたが、本当に英二郎にピッタリ。いいキャスティングです。
◆妻夫木聡(つまぶき・さとし) 1980年(昭和55年)12月13日、福岡県生まれ。97年ホリプロ主催「超ビッグオーディション」で第1回グランプリを獲得。98年に第10回ヤングシナリオ大賞「すばらしい日々」(フジテレビ系)で俳優デビュー。以後、フジ系「お水の花道」(99年)「カバチタレ!」(01年)「ランチの女王」(02年)、TBS系「池袋ウエストゲートパーク」(00年)「天国に一番近い男」(01年)などに出演。映画は「GTO」(99年)「SABU」(02年)など。今後「ドラゴンヘッド」「さよなら、クロ」(松岡錠司監督)「ジョゼと虎と魚たち」(犬童一心監督)「きょうのできごと」(行定勲監督)が公開予定。身長171センチ。血液型O。
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(取材・笹森文彦、近藤由美子)
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