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第373回    三宅裕司  
2003.08.03付紙面より

三宅裕司
写真=口調やしぐさはテレビで拝見する姿と全く一緒。すごく気さくで、さらにそこにユーモアを織り交ぜた話が加わって、何か生でバラエティー番組を見ているような気分になりました。仕事ではありますが「いいものを見させてもらったな」が本音です
(撮影・鈴木豊)

お洒落でクール 江戸前の笑い

 役者として司会者として舞台、テレビからラジオ、スクリーンまで常に顔を見せている三宅裕司(52)。映画「釣りバカ日誌14」(9月公開)を撮り終えたと思ったら、主宰劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の10月公演が待っている。東京は神田生まれの江戸っ子だが「粋でいなせ」に「シャイでほのぼの」をプラスした現代の“江戸前コメディアン”と呼びたい男である。


母は日舞の師匠

 三宅裕司のコメディアン人生は、なるべくしてなったといえる。生まれは東京のど真ん中、神田神保町。母親の美智さんはSKD(松竹歌劇団)出身で、日本舞踊のお師匠さんだった。おばに当たる母の妹もSKDで踊っていた。

 −−芸能界入りはお母さんの影響ですか

 三宅 それもありますが、もう1つ、小学生のころ、おじによくアメリカのコメディー映画に連れて行ってもらったのが原点になってますね。

 −−学校では周囲を笑わせる人気者だった

 三宅 いや、中学時代はベンチャーズ全盛でね。あのカッコ良さにあこがれてバンドを組んで熱中した。その流れでニューロック、ジャズコンボから、コミックバンドもやったねえ。大学(明治)ではジャズの「レッド・フライング・ディスク」コミックバンドの「したたらず」と落語研究会にも入って大忙し。パーティーなんかやると、母が出演してくれて日舞を踊ってくれました。

 92年に亡くなった美智さんは芸能界に進んだ三宅の一番の理解者で、息子のテレビを見るのを何よりも楽しみにしていたという。最期をみとった数時間後、気丈にテレビ番組の司会を務めたが、会見では「昨夜、裕司だよ、頑張れよ、と声をかけたら目を開けたんです」と涙を隠さず、母子の情愛の深さを見せつけた。そんな母親に見守られて思う存分芸事に取り組めた三宅をさらに成長させたのが音楽と落語だった。

 −−明大の落語研究会では部長だったんですか

 三宅 いや渉外担当でした。落語の芸の方では、1番伝統のある紫紺亭志い朝の名をもらいました。僕が4代目で、5代目が立川志の輔、6代目がコント赤信号の渡辺正行。彼らとは今でも付き合いは続いていますよ。独演会の知らせは毎回来るし、3、4日前に志の輔から新しいCDを送ってきました。渡辺とはしばらく会ってないけれど…。

 −−落語家になる気はなかった?

 三宅 1人で座ったままでやるより、グループで動く方が好きなんですよ。


クラブで演奏も

三宅裕司

 大学を卒業し、コメディアンを目指して日本テレビタレント学院に入ったが、日の目を見るまでは9年間ほど雌伏の時期を過ごす。「『日本テレビ−』は生徒が若い人ばっかりでなじめず、3カ月で辞めた」。次は東京新喜劇の旗揚げに参加したが、結局1回も公演しないまま終わる。コントグループの少年探偵団を経て、大江戸新喜劇創立に加わったが「笑いの質が違う」と座員15人を引き連れて現在のSETを結成したのが79年、27歳だった。「その後もしばらくは苦しかったが、助かったのは31歳の時『ヤングパラダイス』(ニッポン放送)に出させてもらったこと」という。知名度も上がり、SETの売りもの「ミュージカル・アクション・コメディー」の熱烈ファンもついてきた。

 −−温かい家庭でスクスクと育ったという印象を持つんですが、どんな父親ですか

 三宅 高校生の女の子、中学生の男の子がいます。子供に対してはあまり怒らないで説明をするタイプ。女房が怒る役です。「ずるい!」って言われちゃうけど(笑い)。一緒に映画を見たり、休みの期間など必ず家族旅行してます。

 −−リフレッシュ法は

 三宅 温泉がいいですねえ。大きな仕事が終わるごとに、お疲れさまの意味で行きます。もちろん女房と一緒ですよ。僕の方が「今度はここがいい」と調べて手配するんです。

 −−趣味、特技は

 三宅 特技といっても(仕事に)つながっちゃうんだけど、音楽、楽器演奏かな。中でもドラムスが一番発散できますね。自宅の部屋に防音装置を施してるんです。楽器はギター、ベース、キーボード、ピアノ、サックス、三味線もいじります。ジャズクラブで飛び入りでドラムスをたたくのも気持ちいいですねえ。自由ケ丘と銀座によく行くクラブがあって、行くと「三宅さん、1曲どうぞ」って勧めてくれるんです。


小学生からハスキー

 −−最近、タフマンのテレビCMに出ていますが、健康面は

 三宅 酒飲みだすと1軒じゃ絶対に収まらないはしご癖でね。明け方の締めは、ギョーザでビールと決まってるから、劇団員は「座長と飲むと大変」と言われてる。そんなことやっていたせいか、尿酸値が高く、通風とは10年来のお付き合い。漢方薬で抑えているけど、疲れたり酒が過ぎると再発しちゃう。3、4年前に夜型から朝型の生活に変えたんですが、酒が弱くなったことも理由の1つなんです。

 −−その、独特のハスキーな声は酒のせいですか

 三宅 いやいや、小学校時代からこの声なんです。高2の時に落語研究会で落語をやるのに「大人の声が自然に出ていいなあ」ってうらやましがられたっけ。この間も、タクシーの運転士に前向いたまま「三宅さんでしょう」って言われちゃった。かなり個性的なんでしょうね。


大店の若だんな

 プロデュース公演全盛で、中小劇団体制の維持が難しい演劇界で「ミュージカル・アクション・コメディー」と銘打つSETは25年目を迎えた。SETの座長兼俳優としての三宅は、体力の限界まで歌い踊るド派手なステージングにこだわる。一方、司会などのタレントとしての三宅は、ほのぼのとした包容力のあるお兄さん(おじさん?)的キャラクターが持ち味。落語に出てくる大店(おおだな)の若だんなの平成版のような、おっとりした魅力で、関西系芸人のコテコテ、ギラギラとは正反対の、しゃれていてスマートな笑いが三宅の武器だ。

 −−演劇の根本理念は

 三宅 お客さんが楽しめるものを作る。これ1つだけです。当時、新劇やアングラ劇は難解なのが多かった。だから、分かりやすくて楽しい芝居をやろうと思ったんです。テーマとギャグのバランスが大事ですね。テーマを主張するためにはギャグが邪魔になり、ギャグがないと面白くない。

 −−演出家としてはどんなタイプ

 三宅 ものすごく優しい。委縮させちゃうと、いいものが出ないでしょう。初めは僕がギャグを書いて座員にやらせたんだけれど、面白くないことが多くって。途中から「ギャグは自分で作れ」ってことになった。コメディーの難しさ、怖さは、笑いと拍手で結果が出ちゃうことですね。


10月には戦争劇

 −−10月の舞台は、戦争がテーマですね

 三宅 うちの劇団は、笑わせているだけでなく、以前から結構現代的なテーマを取り上げてるんですよ。遺伝子交配とかコンピューターとか…。今年はイラク戦争のインパクトが強いですからね。とにかく笑わせながら最後にテーマをきっちり訴えたいですね。

 一線で活躍する岸谷五朗、寺脇康之もSET出身。

 −−2人は自分たちのユニット「地球ゴージャス」で派手な舞台をやっていますが、意識しますか

 三宅 できる限り見に行きますよ。(SETの)まんまだなと思います。

 苦笑のうちに、自身の演劇路線への自信をのぞかせた。

 −−舞台以外にも幅広く活躍していますが、どうバランスを取ってますか

 三宅 バラエティーなどのレギュラーはテレビ、ラジオで5本を堅持しています。これだと舞台公演や映画などに年間1、2本出られるんです。

 9月20日公開の映画「釣りバカ日誌14」では、ハマちゃん(西田敏行)の課に新しくやってきた岩田課長が三宅の役。西田のツッコミに三宅の絶妙のボケが見られる。

 ことさら大言は吐かないが、ソフトな口調の端々に秘めた熱情がほの見えた。このまま都会派コメディアン道を突っ走っていってほしいと思う。


ショービジネスの権化&公務員のような堅さ

 映画「釣りバカ日誌14」で共演した西田敏行(55)  三宅さんが劇団を創立したころ、テレビのコントでご一緒したのが面白くって忘れられない。アドリブたっぷりでね。今度の「釣りバカ」でもその場でアイデアを出してセットを変えちゃったこともあった。役者になるべくしてなった人ですね。江戸の薫りというか東京らしさを持っている。ちょっとシャイで、それでいて江戸前の泥臭さを感じさせる。(福島生まれの)僕なんかから見るとうらやましいよねえ。ショービジネスの権化みたいな面と公務員のような堅さを持ち合わせていて、実にバランスがいいんだなあ。


 ◆劇団スーパー・エキセトリック・シアター第41回本公演「究極音波兵器〜ULTIMATE SONIC ARM〜」 SETが「戦争」をテーマにした舞台に挑戦。失職し、恋人にもふられた男(小倉久寛)がある宗教団体で霊視能力を開眼。教祖(三宅裕司)の策略で「某軍事大国が秘密兵器を開発したので、平和を守るには先制攻撃しかない!」と予言させられ…。作・木和語、演出・三宅裕司。10月4〜19日、池袋の東京芸術劇場で。SETインフォメーション(電話)03・3420・2897。


 ◆三宅裕司のレギュラー◆ 現在進行中のテレビは日本「どっちの料理ショー」「三宅裕司のドシロウト」朝日「世界痛快伝説!!運命のダダダダ〜ン」東京「最高!ブギウギナイト」。ラジオはニッポン放送「ザ・ベスト30スゲェ」の計5本


 ◆三宅裕司(みやけ・ゆうじ)本名同じ。1951年(昭和26年)5月3日、東京都生まれ。幼時から芸事に親しみ、中学・高校時代はベンチャーズにあこがれてバンドを結成、明大(経営学部)では落語研究会で4代目紫紺亭志い朝を名乗る。卒業後、コメディアンを目指し2、3の劇団に所属するが79年、スーパー・エキセントリック・シアターを結成、座長となる。劇団活動のほか、ニッポン放送「ヤング・パラダイス」やTBS「イカすバンド天国」の司会やドラマ、映画出演も多い。86年に結婚した正子夫人との間に1男1女。176センチ、75キロ。血液型B。


(取材・梶繁男)

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