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  インタビュー<日曜日のヒロイン>
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第409回    柴咲コウ  
2004.04.11付紙面より

柴咲コウ
写真=「目に力があるなあ」と、レンズ越しに感じた。確かに目は大きいけど、それだけではない。澄ましたひとみはクールで迫力があり、訴えてくるものがある。それでいて笑ったときのそれは、かわいいだけでなく、他人をその楽しさに引き込む、そんな力がある。ずっと目に注目しながら、シャッターを切った
(写真・鹿野芳博)

自然に素直に「好きな自分を見〜つけた!」

 昔は、大人びた自分の顔が嫌いだった。意志の強そうな、きりりとした瞳(ひとみ)が印象的な柴咲コウ(22)。出演するドラマは軒並み高視聴率を記録、主演映画もヒット、歌手活動も成功している。今や若手女優の中で抜群の人気と実力を持つ女優に成長した。そんな飛躍の裏には、外見と中身のギャップに悩むジレンマをゆっくりと克服するまでの過程があった。


ナンパ事件

 柴咲を起用する映画監督やプロデューサー、演出家たちは口をそろえて言う。「目に強い意志を感じる。眼力がある」。

 大きな瞳。目つきはシャープ。きりりとした眉(まゆ)も手伝って芯(しん)の強そうな印象を受ける。

 「目の強さですか? よく言われますねえ。自分では、そんな風に思ったことはないんですけど。でも(目がいいと)言われていることを除けば、私なんて別にいいとこないじゃんとは思いますけど(笑い)」。

 その言葉通り、かつては自分の顔があまり好きではなかった。コンプレックスと言ってもよかった。

 14歳の時、街を歩いていたら、男性から声を掛けられた。相手はどう見ても、32、33歳。取り立てて大人っぽい服装をしていたわけではなかった。

 「それがとてもステキな男の人だったんですけど、どう見てもかなりの年上で…。苦しみましたねえ、そのギャップに。私のことを幾つだと思ったのでしょうかね。自分の本当の年齢を知ったらびっくりするんだろうなって。驚かれたら、それこそこっちも傷つきますから」。

 声を掛けてきた男性のもとを小走りで去った。

 「自分では普通の中学生のつもりだったのに、妙に大人に見られるコンプレックスというか。心の中と外見の、あまりにも離れたギャップは、いつもどこかつきまとっていて。大人っぽく見られてうれしい時もありますけど、やっぱり、年相応っていうか、その方が自然ですよね」。

 子供のころは、自分の顔を好きになれなかった。顔色は今よりも浅黒く、髪も太かった。いわゆる「濃い顔」だった。

 「気にしてました。写真を撮る時は、うつむいてみたり、妙ににらんでみたり。根暗なイメージもありました。笑い方一つにしても好きじゃなかったですね」。

 もちろん、すべてが嫌いだったわけでもない。

 「でも、嫌い嫌いばっかりではもちろんなくて、まったく自信がなかったわけでもないですよ。そうじゃなきゃ(学生時代に)彼氏なんてできなかっただろうし(笑い)」。


自分認める

 自分の中で「大人顔」に悩みを抱えていたが、周囲の評価は違った。「ナンパ事件」から間もなく、街でスカウトされ、芸能プロダクションに所属した。

 「それほど熱心な気持ちはありませんでした。何となく面白そうだなと」。

 CMモデルやバラエティー番組に出演した。女優としてドラマに出演する機会にも恵まれた。

 「始めたばかりのころは自分の顔があまり好きじゃないこともあって、やる気が出なかった。出来上がったものを見ても、中途半端な自分が映っていて、好きになれなかった。CMだって、作り物ですから、妙に大人びていて、自分とは遠いところにあるなあと」。

 中途半端な気持ちを抱えたまま、仕事の量だけは増えていった。

 「何がきっかけというわけではないのですが、緩やかに気持ちが変わってきたというか。与えられた仕事はきちんと取り組もうと」。

 故深作欣二監督の映画「バトル・ロワイアル」で殺人鬼のような女子高生を演じて注目された。窪塚洋介(24)主演の映画「GO」では奔放な女子高生役を好演。各映画賞の新人賞を総なめした。その後は連続ドラマにも次々と出演した。

 「きちんとやろうと思ったら、周りの人が評価してくれた。いろんな役を演じることができる自分が、顔のことも含めて、すごく好きに思えるようになった。自分を認めることができるようになったのかな。今考えると、もしかしたら、外見に追い付こうと、成長しようとしたのかも知れませんね」。


選択の責任

 こうしたナイーブな悩みを抱えていた一方で、仕事の現場をはじめ、人と接する時の言葉は、非常に明快だ。正しいと思ったことは言う。うそをつかず、素直でいたい。撮影現場でも自分の意見はしっかり言う。

 「演じていて、これってありなのかな、不自然じゃないかなという動きを感じることがあるんです。それは自分が役をつかんでないからかも知れない。だから、まず、聞くんです。何でこうなるのですかと聞いて、う〜んって考えていたら、それはやっぱり不必要な動きなんです。逆に答えが返ってきたら、ああ、そうかと気付くことができる。聞かないで後悔するのは嫌なんです」。

 役柄などの影響もあってクール、物事をはっきり言う、男にこびないなどの印象が強い。同世代の女性からの人気が高く、かっこいい女の子の理想像にもなっている。世間が思い描くイメージと、実際の自分とのギャップに悩むアイドルや若手女優は意外に多い。ところが柴咲は「それも自分の責任」と考えている。

 「そんな人間じゃないと思った時もありました。でも、この仕事を選んだのは自分。ギャップがあっても、それを作り出したのはあくまでも自分ですし、ある意味、それを望んでいた部分もあったからこそ、今、ここに自分がいるんだろうし、それでいまさら、ぎゃあぎゃあ言うのは、ずるくてわがままだと思う」。

 話していると、明るく、よく笑う。冗舌で、言葉は常に明快だ。

 「いろんなイメージを持たれているようですけど、よくあるじゃないですか、近づいてみたら、違うって」。

 自分にうそをつくことが嫌いだ。

 「例えば、誰かを大切に思う気持ちがあるとします。それがいろんなことで不必要だと言われた時、その気持ちをバッサリと、なくすことはできないんです。だから、自分はまだ思っているんだという気持ちを大事にするし、そう思うことで悩むことも大事にする。正直でいたいんです」。


誰でも悩む

 11日からスタートするTBS連続ドラマ「オレンジデイズ」(毎週日曜午後9時)でヒロインを演じる。有望なバイオリニストだったが、突然聴覚を失った大学生役。強く共感したセリフがあった。主演の妻夫木聡(23)が、自暴自棄になったヒロインに向かって言う。「みんな、悩みもあるし、事情もある!」。

 「その通りだ!って。誰だって独り善がりな部分はある。自分が大事だから、それで苦しむわけですよ。だけどそうやって(悩んで)生きている人は実はたくさんいて、みんなそうかも知れない。でも、それはやっぱり自分のことしか実感できないから分からないけれど、そうやって真正面から言われると、ハッと気付かされる。そういう瞬間でしたね。見ている方にも、そんなことを感じて欲しい」。

 かつて自分の顔に悩みを抱えていた少女は、さまざまな役を演じることで、そのコンプレックスを“克服”した。今の柴咲は、自分を変えてくれた、役や作品を通して、悩みや不安を抱える人たちに、何かを伝えられる立場になった。


ぼんやりできる念願のソファ

 <マイベスト1>  昨年購入したソファに座ることが、自宅でのリラックスタイム。「ぼんやりとしながら、自分が今、何をすべきかなんて考えてます(笑い)。これから何をしようかなと考えている時間が幸せですね」。ソファがずっと欲しくて、昨年ようやく手に入れた。1メートル四方以上ある正方形の白いソファで「安かったんですよ!」。自宅ではお酒も楽しむ。つまみは自分で作ることが多いそうです。


 ◆柴咲(しばさき)コウ◆ 本名未公表。1981年(昭和56年)8月5日、東京都生まれ。98年TBSバラエティー「倶楽部6」で本格デビュー。99年「ポンズ・ダブル・ホワイト」やJRA「ジャパンカップ」のCMで注目される。00年の映画「バトル・ロワイアル」で女優として脚光を浴びる。映画は、01年「GO」03年「黄泉がえり」04年「着信アリ」に出演。02年「夢のカリフォルニア」「空から降る一億の星」03年「GOOD LUCK!!」「Dr.コトー診療所」など話題ドラマに出演。02年に歌手デビューし、映画「黄泉がえり」の主題歌「月のしずく」は大ヒット。160センチ。血液型B。


(取材・松田秀彦、文・鹿野芳博)

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