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  インタビュー<日曜日のヒロイン>
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第415回    小西真奈美  
2004.05.30付紙面より

小西真奈美
写真=上品な立ち居振る舞い。それでいてハードに演劇の練習をこなす日常を「快」と言う。見掛けでは判断できない、ハートは相当にタフだと感じました。そのコラボレーションが、彼女の魅力だと思います
(写真と文・鈴木豊)

心の共鳴求め舞台へ 観客の一言が「宝物」

 時々、外見のイメージと実際の人柄がとんでもなくかけ離れた人がいる。連続ドラマに立て続けに出演し、映画、舞台、CMと幅広く活躍中の女優小西真奈美(25)がまさにそう。偶然出合った「感動」が運んでくれた転機に真正面からぶつかり、立ちふさがった「地獄の5日間」ともいえる試練を乗り越えてきた。大胆不敵な行動力と「感動」にこだわる強い意志が、虫も殺さないようなソフトなたたずまいの下に激しく息づいている。


思い立ったらNY

 それは、午前2時すぎのことだった。都内で打ち合わせ中だったマネジャーの携帯電話が鳴った。

 「もしもし、○○さんですか? 今、シロクマが背泳ぎしてるんです! 本当なんですよ!」。

 興奮で弾む声の主は、小西だった。「こんな時間なので、緊急事態かと思ったよ」。マネジャーは安心したものの、何も、こんな時間にシロクマが背泳ぎしていることを報告されてもと頭を抱えた。

 シロクマが背泳ぎしていたのは、ニューヨークのセントラルパーク。最近になって長めの休みが取れた小西は、一人旅を楽しんでいた。

 「日中で暑かったのでシロクマも疲れているのかなと思って、その場を立ち去ろうと思ったら突然、池にザップーンと飛び込んで、背泳ぎし始めたんですよ。手足の動かし方、しぐさが本当に人間とそっくりで、びっくりしたんです。だれかにその感動を伝えたくて、時計を見たら日本は夜中。絶対起きている人で、迷惑がかからない人を探したら…。やっぱり、迷惑でした?」。

 インタビューに同席していたマネジャーは、苦笑を隠さなかった。

 アザラシの赤ちゃんを思わせる無垢(むく)な顔立ち。話し方も実に穏やか。表情もやわらかい。「ニューヨーク女一人旅」とのギャップがどうにも埋まらない。聞けば英語も堪能ではないという。治安はかなり改善されたとはいえ、手ごわい街だ。

 「行ったことがなかったので、よし、行ってみるかという感じでした」。

 大胆不敵。動機も単純明快だ。

 「言葉は片言で、単語を並べるだけでした。地下鉄も乗って、いろんなところを歩き回りました。最後の方なんて、バッグも持たず、ポケットにパスポートとカードを入れて歩き回ってました。全然疲れなかった。ものすごく面白かった。ニューヨークに合っているんですね、私って」。

 ブロードウエーでももちろん1人で観劇。しかも感激した。心を揺さぶられ、ステージに向かってスタンディングオベーションを送った。気が付くと「イエーイッ!」と叫んでいた。周りの観客もみな、総立ちで拍手を送っていた。

 「本当に素晴らしいなと思いました。私が興奮していると、周りの方々も『よかったわよね』という感じで気軽に声を掛けてくるんです。国も使う言葉も違うのに、違和感なく感動を分かち合う。これはすごいなと思いました」。


躊躇しない行動力

 全く躊躇(ちゅうちょ)のない行動力。ソフトなイメージの外見と結びつかないこの力が、女優の道に進ませた。きっかけは、つかこうへい氏の作・演出の舞台だった。

 高校卒業後、大手モデル事務所に所属。生まれ故郷の鹿児島を離れて、上京した。たまたま知人に勧められて、舞台「銀ちゃんが逝く」を見に行くことになった。舞台劇を見るのは初めてだった。

 「見たことがないものを見ることができるという好奇心ばかりで、つかこうへいさんがどうのこうのということは全く意識してませんでした」。

 それは、飾らない舞台だった。舞台装置もメーキャップも音楽もシンプル。しかも出演者のほとんどがジャージー姿だった。文字通り俳優たちが、体ひとつで感情を表現していく。気が付くと、涙がポロポロこぼれ落ちていた。

 「衝撃的でした。人間って、体ひとつで、ここまで人を感動させることができるんだと。これは、すごい表現能力だなって」。


自分の限界に興味

小西真奈美

 当時19歳。モデルとして活動していたが、充実感はなかった。目の前の芝居は、自分の迷いや不安、悩みを吹き飛ばすのに十分すぎる衝撃だった。終演後につかこうへい劇団の関係者からオーディションの話を聞いた。迷わず飛びついた。

 「何もお芝居のことは知らないけど、何もやらないうちから、この出合いを否定したくなかった。人の心を揺さぶり、感動させることができたらいいなと思った」。

 オーディションは、つか氏が主宰するワークショップと呼ばれる5日間のレッスンだった。レッスンとは名ばかり。小西に言わせればそれは「それまでの人生の中で一番つらかった」5日間だった。

 参加者600人。そのほとんどが舞台やダンスの経験者ばかり。

 「シロウトは私ぐらい。周りを見ると明らかに違いましたから(笑い)」。

 けいこは1日10時間。つか氏があちこち動き回る中、参加者はひたすら、踊り、走り、飛び回る。動きっぱなし。格闘技のようなこともやらされた。すべてにおいて未経験者だった小西は休憩時間もひたすら練習を続けた。すると、つか氏が「はい、○番と○番、お疲れさまでした」と、あちこちで失格者の宣告を始めた。

 「どんどん落とされていくんです。手を抜いていることが分かるわけですよ。本番だけちゃんとやろうという人は、練習中だと思って手を抜いてしまう。だから『お疲れさまでした』ということになっちゃうんですかね。あとはつらすぎて自分からいなくなっちゃう方もいました。本当に大変でした」。

 初日を終えた時点で肉体的には限界だった。


脚光「蒲田行進曲」

 「体を動かすことは大好きでしたが、人生でこんなに汗をかいたこともなかった。想像以上のものでした。でもそこから逃げだそうという気は不思議となかった。人生のうちのたった5日間じゃないですか。自分がどこまでできるか、ゴールの時に自分がどんな状態なのか、見てみたくなったんです。逃げるという選択肢がなくなったら、あとは進むだけ。けいこ中は無心でした」。

 最終日、最後まで残ったのは6人。その中に小西もいた。自分との闘いに勝った瞬間だった。

 「よく自分が残ったと思いました。どう考えても何もできなかったですから。踊りなんて、形になっていないし、振り付けを覚えるために必死にやっていただけって感じでした」。

 つかこうへい劇団6期生として、舞台を踏むことになった。99年「蒲田行進曲」でSMAP(スマップ)草なぎ剛と共演し、脚光を浴びた。舞台出演も続けながら、00年からテレビドラマにも進出。現在出演中のTBS「オレンジデイズ」など、これまでに19本のドラマに出演した。映画の出演作は「踊る大捜査線2」など6本を数え、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞、キネマ旬報で、新人賞を受賞。若手実力派として、最も活躍を期待される女優の1人になった。

 しかし、自分の原点は忘れない。5年前の「蒲田行進曲」の終演後、観客から寄せられたアンケート用紙につづってあった言葉を、今でも大切に胸にしまっている。

 「感動しました。勇気をもらいました。明日も生きていこうと思いました」。

 人を感動させることの素晴らしさ。肉体的、精神的に限界を超えたあの5日間を乗り越えることができたのは、自分の手でそれを実現させたいという思いがあったからだ。

 「自分が精いっぱい演じることで、だれかの人生にこんなにも影響を与えることができる。女優になってよかったと思います」。

 思い込んだら逃げずにとことん進む行動力がある限り、小西真奈美はもっともっと人を感動させられる。


大物の素質十分

 つかこうへい(56)  インチキや、あざといことをしない人間だと思ったんです。素直で吸収力があるように見えました。とにかく全力で取り組み、全力でぶつかってくる。けいこ場での待ち方も、たたずまいもとてもよかった。気持ちが入っていた。芝居は、役づくりがどうのこうのと言う人もいますが、下手でも(芝居する)相手の目をしっかり見て大きな声で話せば、それで(観客に)感情は伝わるものなんです。そういうこともすんなりやれる。好感が持てました。大物になる資質は、十分にあると思います。


 ◆小西真奈美(こにし・まなみ) 1978年(昭和53年)10月27日、鹿児島県生まれ。98年につかこうへい劇団入り。同年「寝取られ宗介98」で女優デビュー。99年「蒲田行進曲」などつか氏作・演出舞台に出演。ドラマは01年NHK「ちゅらさん」02年フジテレビ「整形美人」03年TBS「HOT MAN」04年フジテレビ「ファイアーボーイズ」など。01年からフジテレビのバラエティー「水10!ココリコミラクルタイプ」にも出演。02年「阿弥陀堂だより」で映画デビューし、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞などの新人賞獲得。168センチ、B80−W59−H88センチ。


 ◆TBS[オレンジデイズ」 就職活動中の大学4年生の櫂(妻夫木聡)と聴覚を失ったバイオリニスト沙絵(柴咲コウ)のラブストーリー。小西は、櫂の3歳年上の彼女で大学院生の真帆を演じている


(取材・松田秀彦)

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