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2004.07.25付紙面より
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| 写真=ほおに手を当てる“作家のポーズ”をン頼むと「野沢尚さんの(遺影の)このポーズ、カッコ良かったんだよね」と話した三谷さん。「三谷さんもこのポーズ好きなんですか」と尋ねると、噴出して「あなたがやれって言うから…」。そんな三谷さんもカッコいいです
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| (撮影・水谷安孝) |
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僕、実は理系…喜劇には方程式がある
異色の大河ドラマもようやく視聴率が上向いてきた。NHK「新選組!」を手掛ける脚本家・三谷幸喜さん(43)。どこか乾いた笑いの作風は小学校4年のときからだから、体に染み込んでいる。「涙」が求められる今回の作品は、大冒険だという。
夢だった大河
「新選組!」は折り返し地点を通過した。池田屋事件でピークを迎えた組織が、これから破滅に向かって突き進んでいく。「ドラマで人を泣かせるのはイヤなんですよ。人を泣かせておいて自分は喜んでいるというのは邪悪な感じがして」という喜劇作家が、泣ける物語に正面から取り組んでいる。
「喜劇は分かる人が笑ってくれればいいって、結構客を選ぶジャンルじゃないですか。でも今回はプロデューサーから『日本中の人が親戚になったと思って書いてくれ』と言われて、それも1つの方法だなと。笑わせたり泣かせたり、やったことのないシーンやセリフもあって、僕自身、冒険しています」。
取材場所に指定されたNHKの応接室に向かう途中、トイレに急ぐ三谷さんとすれ違った。そんな状況でどうかと思ったが頭を下げると「あ、どうも…」。意外な長身(174センチ)をかがめ、横走りでトイレに消えた。自ら舞台に立った経験が少なくないからだろうが、その仕草やコメントはごく自然に笑いを呼ぶ。だが、今回ばかりはその喜劇作家としての存在感が裏目に出た。
芹沢鴨の暗殺や池田屋事件など、今でこそ視聴率も記録しているが、スタート当初は厳しい評価が相次いだ。若き近藤勇が坂本竜馬と黒船見学に行ったという斬新な第1話から、さっそく「史実と違う」と大河ならではの学者目線のバッシングを受けた。
「ショックでしたね。僕はこんなに嫌われていたのかと(笑い)。梨元さんには『打ち切りにした方がいい』と書かれました」。剣術道場・試衛館に掛けられていた「香取大明神」の書にもケチがついた。剣道場の神棚には定番のもので、考証的にも真っ当な小道具だが、主演の香取慎吾にかけたギャグと受け取られた。「これが司馬遼太郎原作だったら誰もギャグだと思わないのに。そんなダジャレで笑いをとろうとする喜劇作家なんていませんよ、ホントに」。
体育館下に穴
初めて脚本を書いたのは、小学4年(10歳)のお楽しみ会での「雪男現る」。吹雪の山荘に閉じこめられた人たちのパニックを描いたサスペンスだった。
「『大脱走』とか『12人の怒れる男』とか、そのころから集団劇、密室ものの映画ばかり大好きで観ていました。雪男を演じた前田君はここ(アゴ)にほくろがあって『豆ちょん』と呼ばれていたんですけど、目と口だけ見える帽子をかぶせて雪男風に。ふふ。それじゃ豆ちょんだと分からないので、かぶせた上からほくろ書いて。ふふ。すみません、くだらない話で(笑い)」。密室での集団劇、キャラクターに合わせて役をつけるアテ書きなど、処女作に早くも三谷作品の片りんがみられる。
そんな才能があればクラスの人気者になりそうなものだが、そうでもなかったらしい。というか、覚えていない。
「僕としては勉強もスポーツもできる優等生だったと勝手にイメージしていたんですけど、当時を知る人によると、いじめられっ子だったらしいんですよ。記憶がなくなるほどつらかったんでしょうか。なぜかこの歳になっても○崎という名前が嫌い。おそらくクラスの○崎君にいじめられていたんでしょう」。
書くことが得意で、先生が気に入る書き方が分かる「イヤ〜な子供」だったという。「先生に気に入られるためにはウソも平気で書きましたから。『こういう自分を反省しました』みたいな、すごいきれいごとをほぼ創作で。それがお昼の校内放送で読まれたり」。
創作では物足りず、とんだフライングも。「『大脱走』をやりたくて、先生に内緒でみんなで体育館の床下に穴掘ったんです。半年かけてすごいトンネルつくって、みんなとの秘密なのにそれも作文に(笑い)。『やってはいけないことだと反省しました』とか。総スカン食らいますよね」。
計算する「間」
高校は理数系だった。授業についていけず、テストは0点ばかり。
「理数系の高校って、授業の3分の2くらいが数学とか化学とか物理なんですよ。0点ばかりであまりにも膨大な時間がもったいないというんで、先生に『お前はもう勉強しなくていい』と僕だけ机を逆に向けさせられて、後ろの黒板に向かって好きなことしていろと。今考えるといじめに近いひどい話なんですけど(笑い)、当時の僕はものすごくうれしかった」。1人だけ机ごと後ろを向きながら、小説やマンガを書いたり、歴史の本読んだりして3年間を過ごした。
「ダメなりにも3年間理数系の高校にいたことが、喜劇作家としての今の僕にものすごく役に立っている。微分積分はダメですが、三角関数までは理解できましたから」。コメディーとは理数的、方程式のある計算の世界だと言い切る。「この局面ではこうすれば絶対おもしろくなる、という法則が絶対にある。イメージや情緒では笑いはつくれないですよ。『間がいい』とよく言いますけど、このタイミングで笑わすには0コンマ何秒必要、という規則が絶対にあるはずなんです。同じことを萩本欽一さんもおっしゃっていて『そこは3つ』とか、間の数え方が独特。絶対に理屈なんですよ、笑いって。僕もまだ見つけていない方程式がいっぱいある」。
4年の空白
世の中は「冬のソナタ」などの純愛ブームだが「僕は書こうとは思わないです。愛の告白シーンとか、僕がそういうふうにいつも言ってるんじゃないかと思われそうで恥ずかしいですよ。実際、言ってることを使ったりしてますから(笑い)。『三谷はこんなことで女が落ちると思ってるのか』なんて見透かされそうで照れくさい」。
妻は女優の小林聡美(39)。フジテレビ深夜ドラマ「やっぱり猫が好き」(89年)で、脚本家と主演女優として出会った。95年の結婚会見は「友達が決して寄りつかないような家庭にしたい」と真顔でボケる夫に、妻がツッ込むという夫婦漫才のような展開だった。「俳優としても尊敬しているし、普段もチャーミング。『やっぱり猫が好き』の打ち上げの時にものすごい勇気出して電話番号を書いて渡した記憶があるんですけど、4年間かかってきませんでした。妻は電話番号もらったことも覚えてなかった…。別の仕事で再会して、これを逃すと一生こんなチャンスはないと必死だったのは覚えています」。
「妻は、陰陽でいえば“陰”。パンのCMのおきゃんな姿に驚きました。一緒にパン食べないし。神経質なので、僕の大ざっぱさが彼女には耐えられない時が何度か…。しょうゆのフタをきちんと締めずに冷蔵庫に戻したら、彼女がフタを持ち上げちゃって、ぶわーっと冷蔵庫がしょうゆだらけになって、仕事場から呼び出されて『これを見ろ。こんなことになってるぞ』と。全部僕が掃除しましたけど、まあ、そんな日常です」。照れ屋としてはこれも精いっぱいのノロケなのだろう。ケンカを避けるため、互いの作品は見ないのがルールという。
今後の目標を聞いた。
「映画ですね。『ラヂオの時間』がドイツとかアメリカとかカナダとか、海外で上映された時に、字幕に置き換えるだけでみんなが笑ってくれて。外国人を笑わせるのって快感なんですよ。自分が書いたもので世界中を笑わせたいです」。
携帯番号は教えられない…だけど大好き
「新選組!」主演の香取慎吾(27) 言いたいことの2割くらいしか言えないタイプ同士、通じ合える。新選組の出演依頼があった時「香取君じゃないなら企画を変える」とまで言ってくれてうれしかった。「あなたはやりますから。だって大河は僕の夢なんですよ?」って。断れませんよ! とにかく、僕のことをものすごく好きでいてくれる人のベスト3に入ります。「古畑任三郎」以来5年間もケータイの番号を聞かれ続けているんですよ。教えられませんから(笑い)。でも、僕も同じくらい三谷さんが好きです。
◆三谷幸喜(みたに・こうき) 1961年(昭和36年)7月8日、東京都生まれ。日大芸術学部在学中の83年に東京サンシャインボーイズを旗揚げし、主宰、座付き作家・演出家として「12人の優しい日本人」などのヒットを生む。学生時代からテレビ番組の構成に携わり、94年の劇団休止後、テレビドラマ「警部補 古畑任三郎」「王様のレストラン」や映画「ラヂオの時間」「みんなのいえ」などを製作。舞台作品に「オケピ!」など。
◆NHK大河ドラマ 第1作は尾上松緑が井伊直弼を演じた「花の生涯」(63年)。「独眼竜政宗」(渡辺謙=87年)「武田信玄」(中井貴一=88年)など、平均視聴率が39%を超えるものも。新選組をメーンテーマにしたのは大河41年43作目で今回が初
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