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第435回    成宮寛貴  
2004.10.17付紙面より

成宮寛貴
写真= 写真撮影が終わり、笑顔と真剣な表情のどちらが好きか、聞いてみた。すると「特にないけど、ただ、笑ってと言われて笑うのは本当の自分ではない気がしますね」と、本音を話してくれた。確かに私は撮影中、「ちょっと笑ってもらえる? 」と言ったこともあった。それでも嫌とは言わず撮影はスムーズに進んでいた。この考えに共感した私は、自分が表情を注文した写真は出稿するのをやめようと思った。この紙面の写真はインタビュー中に出た自然な表情のものです。
(撮影と文・鹿野芳博)

役者が天職かどうか答えの出ない問い…だからガムシャラにやるだけ

 「今が旬」という言葉がぴたりとあてはまる、人気若手俳優成宮寛貴(22)。舞台、映画、ドラマ、CMと活躍の幅は広い。17歳でデビューしてから5年。順風満帆の役者人生に映るが、実は常に不安を抱え、葛藤(かっとう)しながら歩いてきた。親しみやすい笑顔の裏には、22歳とは思えないクールなまなざしがある。


今年舞台3作目

 「今回も何とかなるかな、と思ってます」。5〜6月の「浪人街」、8月の「お気に召すまま」に続き、公演中の「マダム・メルヴィル」が今年3作目の舞台。けいこにも多少余裕が感じられる。蜷川幸雄氏演出のシェークスピア喜劇「お気に−」を乗り切り「何かが変わった」という。

 「シェークスピアの主役というのは、ずっとしゃべってるんですよ。しかも古典特有のレトリック(修辞法)がたくさんある。聞き慣れない言葉が多くてリアルに表現するのが難しいんです」。

 いら立ちは頂点に達した。けいこ場に入る前、セリフをおさらいした車の中では、助手席のシートをガンガン蹴飛ばした。自宅では目覚まし時計を投げた。

 「今考えると、あのときおれの頭はおかしかったなって。できない自分に腹が立って。そういう自分がおかしいというのは分かっているんだけど、やってしまう…。切れやすい性格ではないのに、自分でもびっくりしました」。

 そして後悔した。

 「あーっ、何やってんだ、おれ。こんなことやるより、もっと本(台本)を読めってね。イメージはあるんですけど、なかなかできるようにはならなかった。役柄も難しかったですね」。

 出演者すべてが男性の舞台で、ヒロインのロザリンドを演じた。初めてウエディングドレスを着た。恋人役の小栗旬(21)と熱い口づけを交わした。

 「不思議なもんで、普通にチューは嫌ですけど、物語のクライマックスでは、お互いに気持ちが盛り上がっているから違和感はなかったです。キスって、好きだという気持ちを表す一番ストレートな方法だから。ただ、客席から『あーっ、キスする』なんて声が聞こえると、2人ともバランスを崩しちゃって。大変でしたよ」。

 食事が面倒に感じるほど、けいこに没頭する。

 「作品に入ると、食べる時間が惜しくなって。ゼリー飲料をチュルチュル吸って、しのいでます。気を付けていても、やせちゃいますね」。


人の懐にスルリ

 恋人を演じれば、演技とは思えないほどの距離感を生む。栗山千明(20)と共演した映画「下弦の月〜ラスト・クォーター」(公開中)でもそうだった。完成披露会見では「千明ちゃんは、大人っぽい顔とチャーミングな部分と二面性がある。撮影中、本当に好きでした」と打ち明けた。自然にみえるが、意識して深入りしている。

 「自己催眠みたいなものです。ラブストーリーだから、少しの息遣いが映像に出てしまう。見る人が違和感を感じたら、もう興ざめでしょ。だからそうならないように、そこを埋める作業を真剣にやってます。グッと入り込む方が楽なんです」。

 −どういう時にそう感じる

 普段の付き合いでも、対人関係は同じだ。取材日(10月3日)は「マダム・メルヴィル」の初めての通しげいこが行われた日。同時に石田ゆり子(35)の誕生日でもあった。終了後は、関係者が用意したケーキを囲んで、ささやかなお祝い。♪ハッピー・バーステー・トゥー・ユーと音頭を取ったのが成宮だった。大きな口を広げ、顔をくしゃくしゃにして笑う。いつの間にか相手の懐にスルリと入り込む。

 これほどまでに“接近”しても、共演をきっかけに熱愛−なんて芸能界に多いパターンは経験していない。まして、結婚など−。

 「いつごろまでに? 別にないなあ。僕の周りにうらやましい既婚者がいないんですよ。あこがれはありますけど、今は(結婚を)望んでないですね。理想は、尊敬し合ってて、楽しい夫婦。おじいちゃん、おばあちゃんになっても、縁側で仲良くお茶でもすすっているようなのがいいですね」。

 多忙だが、数少ない休みの日ものんびりすることはあまりないという。

 「一番、幸せなのはオフの前の晩に思いきり遊ぶこと。もともと夜遊びは大好きなんですよ。お酒をガブガブ飲んだり、大声で騒いだりとか、不健康な遊びって楽しいんですよね。だから仕事場で『成宮、休めた?』と聞かれて『全然!』と答えることが多い。家にいるより、外へ出る方が好き。それと人といるのが好きなんです」。


ウソつきだった

 22歳とは思えない“対人術”はどのように形成されたのか。少年時代を聞くと「うそつきでした」と即答した。

 「親の欲しい答えが分かると、それを裏切らないようにしていました。大人になった今考えると、絶対良くない! 子供らしくいればよかったと思います」。

 記憶に残るのが、小学校時代に習っていた水泳での“攻防”。

 「遊びたかったから、さぼったんです。親に『行ってきた』と言うと『水着がぬれてない!』とバレて。次にぬらしておいたら、今度は『カルキ臭がしない!』と。さらにカルキ臭がするように細工したんですけど結局、見破られました。母親が特に厳しかったですね。裸にされて家の外に出されたり。漫画みたいでしょ(笑い)」。

 人一倍繊細なのか、大人の言葉にはとにかく敏感だった。こんなエピソードもある。

 「山へ行ったときにお城みたいな建物がたくさんあったんです。『これなーに?』と母親に聞くと『ホーンテッドマンションよ』と。『いっぱいあるんだ』と思ってたら、後々あれはラブホテルと分かったんです。それは本当に説明したらいいと思うんです。子供に対して1人の人間として向き合うのは難しいかもしれないけど、僕は将来そうしたい」。

 「無断外泊を繰り返して、親に暴言も吐いた」という反抗期もあったが、17歳で宮本亜門氏の舞台に抜てきされてデビュー。5年を経て見渡すと「トップスター」と呼ばれる存在になっている。アイドル誌からは引っ張りだこで、行く先々で「ナリ〜ッ!」と黄色い声援を浴びる。「外見でチヤホヤされるのはどう?」と尋ねると、記者の想像がすぎたのか、照れ笑いを浮かべて否定した。

 「そんなことないっすよ。たまに『キャー』となるくらい。でもそう言われるとうれしい半面、すごく不安になる。芸能界の人でもそうでない人でも、格好いい人はほかにいくらでもいますから。まだ22(歳)ですが、外見上のものはすぐになくなっちゃいますからね。すごく複雑…」。

 人なつこさと対をなすように、常に自分を客観的に見つめる目がある。

 「辞めようと思ったことはしょっちゅう。役者を始めようとしたときに、同時に終わらせる勇気を持っておこうと思ったんです。役者が天職かどうかはいまだに分からない。多分、それは一生答えの出ない問いなんだと思います。だから目の前に来たチャンスに飛びついて、がむしゃらにやるだけです」。

 人の心をとらえてやまない、この若者の魅力は、自分の不安をかき消すための全力疾走から生まれている。


同性と話している気分に

 「マダム・メルヴィル」で共演の女優石田ゆり子(35) 成宮君は感受性が強くて、すごくみずみずしい。それでいてどこか哀愁が漂う。物おじしない男らしさがあれば、女っぽい雰囲気を醸し出すこともあって、ふと同性と話している気分にさせられたりします。9月14日の誕生日には、男性用のブレスレットをプレゼントしました。13歳も年下なのに、表現力豊かで、演技では私が教えられてばかり。このまま艶(つや)っぽい感じを守っていってください。


 ◆マダム・メルヴィル パリを舞台に文学教師メルヴィル(石田ゆり子)と米国少年カール(成宮寛貴)が愛を深めていく姿を描く。東京・天王洲アイルのスフィアメックスで11月14日まで。当日券あり。チケットスペース(電話)03・3234・9999


 ◆成宮寛貴(なりみや・ひろき) 本名・平宮博重。1982年(昭和57年)9月14日、東京都生まれ。オーディションを経て、00年の宮本亜門氏演出の舞台「滅びかけた人類、その愛の本質とは…」でデビュー。映画「溺(おぼ)れる魚」(01年)「あずみ」(03年)「深呼吸の必要」(04年)のほか、日本テレビ「ごくせん」(02年)TBS「オレンジデイズ」(04年)などドラマでも活躍。172センチ、53キロ。血液型A。05年カレンダーを発売中。


(取材・市川知幸)

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