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第442回    山本耕史  
2004.12.05付紙面より

山本耕史
写真=「今日ハーレーの納車があるんです」。えっ? 土方歳三がバイクに乗るんだ。その時、忍び込ませた竹光は出番を失った。待ちに待った愛車に、初めて足を掛ける至福の瞬間…。インタビュー中の表情もカッコよかったけれど、マシンを見詰めるあなたの顔は、最高でした
(撮影・水谷安孝)

舞台で築いた芸歴28年、大河で全国駆けた28歳

 みけんにしわを寄せ、ギラリと目を光らせる。低音でどすの利いた声が、鬼副長の威厳をほうふつさせる。NHK大河ドラマ「新選組!」で土方歳三を演じる俳優山本耕史(28)。主に舞台で活躍してきたが、この1年間、SMAP香取慎吾とのコンビで大河の主役を張り、全国区にのし上がった。多摩の無名の薬売りから日本史に名をとどろかせた土方とオーバーラップするが、本人は「不満足」という。土方の志を引き継ぐように、どん欲に高みを目指している。


半世紀生きた気分

 不思議な1年だった。もともと舞台が本業の山本は、テレビドラマの「新選組」でこれまでにない感覚にとらわれていた。一心不乱に演技に取り組むうち、無意識に幕末へタイムスリップしていた。まるで土方歳三の生涯を共有していたような気分になったという。

 「役者人生でこれほど長く同じ役を務めることはなかったので、この1年はとても長く感じました。でも、ドラマの後半、新選組が京都で立ち上がったころからは、時の流れがずいぶん速く思えました」。

 −−その速さとは

 「多分、実際の近藤さんも、土方さんもそうだったと思う。若いころはどう生きるべきか、将来はどうなるのかと悩み苦しむ。でも、これだという自分の生き方を見つけた途端、ものすごい速いサイクルで時間が進む。京で幕府を警護する目標ができた途端、あっという間に時間がすぎていたのでは」。

 −−土方になり切れた

 「役柄をこなす中で、山本耕史とは違う人を半世紀生きた気がしますね。土方という人になれたというか、なっていたというか。今回の新選組では、1人の武士の人生をうそ偽りなく駆け抜けたと思います」。

 0歳からモデルとしてカメラの前にいた。28歳にして芸歴28年。10歳のとき、舞台「レ・ミゼラブル」で少年革命家を演じて脚光を浴びるなど、舞台中心に活動してきた。ドラマでも「愛という名のもとに」「ひとつ屋根の下」(ともにフジ)に出演したが、茶の間の認知度が高まるまでは意外に時間を要した。それがこの1年でガラリと変わった。

 −−大河を1年やれたことは役者として相当な自信になったのでは  「大きな仕事、大役をいただいたとは思います。もちろん土方役にプライドも持っている。でも役者にとっては、大きなことであれ、小さなことであれ、いろんなことをやっていかなければならないと思う」。

 −−満足していない?

 「そう。今までも1つの仕事をやっていて満足したことは1度もないんです。例えば新選組に出たことで、自分を知ってくれる人が増えました。でも、役者としては、お前はそこで何がしたかったんだという不満足感もあります。本来やりたいはずの舞台を、1年ほったらかしにしましたしね。僕の場合、もしそこで満足してしまったら、ほかのことができなくなる。満足できないからこそ、次がある」。


本当にしたいこと

山本耕史

 −−「新選組」は混迷した時代に真っすぐな意思を持って生き抜いた若者を描いた。今の若者にメッセージを送れたのでは

 「自分たちが正義だと思って集まった集団が新選組。今の若い人たちは、自分で正義を見つけ、大切な仲間を持っているか。持っていなかったら持って欲しいと思う。それが間違った正義なら問題ですよ。例えば『薬はオレにとって正義』なんて言われたらどうしようもないけど。今の10代、20代前半の若者はゆがんだ部分が多いと思う」。

 −−原因は?

 「情報が多すぎるのかもしれない。これがダメならこっちとか、こっちの方が楽しそうとか、自分で選んでいるようで選ばれている。そうではなく、もっと自分が今、本当にしたいことは何か、どうやって生きていこうとしているのかを考えて欲しい。今の時代、もちろん新選組のように人をきったりはできないが、彼らは自分のやるべきことに身の危険を顧みず、命をかけた。そういう信念を伝えられたらと思いました」。

 前日は遅くまで飲んでいたらしい。インタビュー開始直後は、うつむき加減でテンションも低かった。それがだ。時間がたつにつれ、正義とは何か、若者が目的を見失っている現状などに話が及ぶと熱くなった。

 −−共演した香取慎吾とも厚い友情が生まれた。彼から学んだことは

 「香取君の最後の収録のときはグッとくるものがあった。何か局長と副長のきずなというか。彼と僕は同い年なのですが、彼の方がずっと大人ですね。よく撮影の進行が遅くなると、僕はいつも顔に出して(スタッフを)怒ったりする。そういうときには、いつも彼が『まあまあ』と僕をなだめてくれた。今、僕は舞台(リンダ リンダ)で座長をしているのですが、一番上の自分がこれではダメだと反省することがあります。香取君のいいところは、吸収していかなければと思います」。


子供は若いうちに

 −−少年時代から芸能界で仕事をしていた。学業との両立は大変だったか

 「そう思ったことは1度もないんです。仕事があっても普通に友達とテレビゲームもしたし、サッカーや野球もした。むしろ僕がリーダーになってみんなを誘って遊んだ。今思うと、人を喜ばせることが人一倍好きで、よく言えばエンターテナー。小2でバック転をしたり、けん玉が学校ではやると一番早くうまくなろうって努力した。最終的には段まで取った。手品もはまった」。  −−結構器用?

 「そうなのかなぁ。小5のときには『レ・ミゼラブル』という舞台で鹿賀丈史さんからビリヤードを習った。私生活ではちょうど中学でブームになって、こっちのもの。むしろ役者という仕事が自分を助けてくれたような気がします」。

 −−5年前、大物女優との交際がうわさされたが、今は浮いた話は聞かない。彼女はいない?

 「いないんですよ。2月ぐらいまでいたんですけど別れました」。

 −−原因は

 「男友達なんですよ。やっぱりそっちと一緒にいたい願望が強い。例えば付き合って最初のころは、彼女と会っていて、男友達から電話が来ると『ごめん、今彼女と一緒だから』って断るんですが、それが続いてくると嫌になる。男の友情は不滅だって分かっていても、その誘いをずっと断り続けるとストレスになる。まだ心底女性を敬えるだけの男になりきれていないんです。自分のことばかり考えているオレには、まだ女性と付き合う資格がないのかもしれない」。

 −−結婚はいつまでにしたい

 「それはもう、早くしたいですよ。できることなら今年中にも(笑い)。僕はお父さんが40歳のときの子供。お父さんがあと10歳若かったら、何か同じことを楽しめたかもしれない。そう思うと、早く家族は持ちたい。あとは役者として、家庭が自分の仕事を後押ししてくれるものになれば最高です」。

 −−役者としての信条は

 「役者は大人になってはいけないと常に思っている。いい役者ほど、いくつになっても泣き顔が子供なんです。感受性って本当に大事。いくら大人になっても、ずっと汚れのないまま、余計なものを省いた心を持っていたい」。

 山本にとって、役者は生まれてから死ぬまでの、一生涯にわたって敷かれたレール。外野からみれば「成功」と思える大河の1年を「不満足」と言い切るところに、メジャーに満足するだけで終わらないという、熱い気概がうかがえた。


僕を超えている彼を見るのが怖くて

 山本が芸能界の兄貴と慕う歌手野口五郎(48) 耕史との出会いは87年のミュージカル「レ・ミゼラブル」。僕がシンセとかギターを楽屋に持ち込んで弾いていると、のぞいていたのが当時10歳の耕史。翌日、彼にギターとアンプをプレゼントしました。彼はすっかりはまって山のように? ラブソングをつくったとか。そんな彼が当時僕の役だったマリウスの役を去年演じてくれました。ドキドキして、はるかに成長して僕を超えてる彼を見るのが怖くて、まだ1度も彼の舞台を見ていないんです。でも彼を見るとうれしいんでしょうね。きっと。


 ◆新選組! 三谷幸喜脚本、主演香取慎吾。12日が最終回。26日に総集編を一挙放送。第1部「武士になる!」(午後4時45分〜同5時59分)第2部「新選組誕生」(同7時30分〜同8時44分)、第3部「愛しき友よ」(同9時〜同10時14分)


 ◆山本耕史(やまもと・こうじ) 1976年(昭和51年)10月31日、東京都生まれ。0歳のときからモデルとして活動。87年舞台「レ・ミゼラブル」初演で少年革命家を演じデビュー。以降「スタンド・バイ・ミー」「RENT」「オケピ!」など主に舞台を中心に活動し人気を得る。趣味はスポーツ全般、バイク。現在はミュージカル「リンダ リンダ」に出演中(12月9日〜12日=大阪シアター・ドラマシティ、同18、19日=メルパルクホールFUKUOKA)。179センチ、64キロ。血液型B。


(取材・林尚之)

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