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第16回日刊スポーツ映画大賞
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主演女優賞

寺島、親子2代の栄冠

中井貴一の写真
寺島しのぶは「賞はへこんだ時の励みになる。とてもうれしいです」と笑顔で受賞の喜びを語った(撮影・長谷川元明)

 「赤目四十八瀧心中未遂」で主演女優賞に輝いた寺島しのぶ(30)は、99年の富司純子(58=作品は「おもちゃ」)に続く初の母娘2代受賞となった。背中いっぱいに入れ墨を入れ、全裸のベッドシーンに体当たりした根性娘は「綾役は絶対にほかの人に渡したくなかった。あらためてやって良かったと思います」とこぼれんばかりの笑顔を見せた。

 「赤目四十八瀧心中未遂」は寺島の映画初主演作品である。初主演でいきなり大きな賞とはラッキーだとか名門のお嬢さんだからなどと思われがちだが、寺島の場合は「自ら勝ち取った」と言っても過言ではない。5年前、原作本を読んで感激し、読者カードで「映画で綾を演じたい」と投書したのだ。「自分からこの役をやりたいと意思表示したのは、後にも先にも1回だけ」という。

 せりふにもある「どぶ川の泥のかゆをすすってきた女」綾のどこに魅入られたのだろうか。「運命に振り回されながらも一生懸命生きているところ。当時、私も綾と同じ25歳。架空の人物にあんなに共感したのは初めてだった。5年たってもその思いが持続していたから、やり遂げるぞ、という気持ちでできました」。

 だから、母親の富司が心配した、裸、ぬれ場も「綾になりきって演じられた」。性根のすわった演技というのだろうか。審査員の目にも「確実に力を持った女優」「久しぶりに女優らしい女優の出現」やら「生卵をゴクリと飲み込む迫力には参りました」と映ったようだ。

 彼女の大胆な裸演技に関しては、5月に婦人誌で告白した失恋体験と結びつける報道も多かった。「あてつけに脱いだ」というたぐいだが、寺島は「撮影は去年から始まっていたのだから、全く無関係ですよ。脱いだのは綾を表現する上で必要だから」と一笑に付した。

 滝つぼにあおむけになって浮くシーンの撮影は3日間かかった。「夏でも水が冷たくて頭のしんがジーンとしてきて、死ぬんじゃないかと思った」というハードな撮影もあったが「初試写で自分の顔が大きく写ったのを見たら、うれしさが込み上げて感極まって泣きそうになっちゃいました」とは、いかにも初主演らしい。

 寺島は東京国際映画祭で優秀女優賞を受けたが「映画の賞って、演劇に比べて反響が大きいみたい。音信不通だった人からメールや電話をいただきました。映画の方がメジャーなのかな。日刊さんの発表があったら、もっとすごいでしょうね」。現在、東京・新国立劇場「世阿弥」に出演中。「楽屋口に『赤目−』のパンフレットを持ったおじさんが待っていて『キャラメルを食べるシーンが切なくて忘れられない。サインしてください』と言われたんですよ」と本当にうれしそうに目を細めた。【梶繁男】

99年度受賞の母富司「完敗です」

 寺島の母、富司純子はまな娘の受賞に「映画は見ましたけれど、私にはとてもあんな勇気はありません。でも皆さんに評価していただいて、娘もやったかいがあったということでしょう。もう私の完敗ですね」と、ちょっぴり苦笑いの交じった喜び方をした。

 寺島が原作本を手に「この役をやる!」と言い出した時、富司は「なんであなたがこんな脱ぐ役をやらなきゃならないの」と猛反対した。そんな母親の心を解きほぐしたのは父親の尾上菊五郎(61)だった。寺島はそのあたりを「母がだんだん折れてきた裏には、父が『しのぶはこれからも女優をやっていくんだから…』と説得してくれたみたい」と説明する。

 今までの受賞の時とは菊五郎の反応が違ったという。「前は報告しても『そう』とそっけなかったんですが『日刊の主演賞いただいたよ』と言うと『そうか、良かったなあ。おめでとう』ってすごく喜んでくれました。かえって、父も年かなあなんて思っちゃって」。

 富司は「映画って決して1人の力じゃないんです。荒戸監督はじめスタッフの方々が、しのぶを良いようになさってくださった結果だと思うんですよ。それを忘れないでより大きな女優になってくれたら」と結んだ。


 選考経過 

 「すごかったの一言」(秋山登)「文字通り女優としての実力が分かった」(福岡翼)と「赤目四十八瀧心中未遂」の寺島しのぶ推薦の声が多数。「器用ではないが好感の持てる演技」(清水富美男)という「黄泉がえり」「星に願いを」の竹内結子に7票差をつけて寺島に。

 ◇寺島(てらじま)しのぶ 本名・寺嶋忍。1972年(昭和47年)12月28日、京都府生まれ。父・尾上菊五郎、母・富司純子、弟・尾上菊之助の芸能一家に生まれ、幼いころからドラマ、CMに出演。青山学院大在学中に文学座研究所に入り、93年に「恋と仮面とカーニバル」で初舞台。その後、文学座を離れ「近松心中物語」などに出演。96年の「華岡清州の妻」で芸術祭賞新人賞を受賞した。

 ◆赤目四十八瀧(あかめしじゅうやたき)心中未遂 車谷長吉氏の直木賞受賞作を「どついたるねん」のプロデュースなどで知られる荒戸源次郎氏がメガホンをとって映画化。生きる目的を失い、尼崎の薄暗いアパートに流れ着いた男は、向かいの部屋に住む娼婦・綾と至福の時を過ごすが「この世の外へ連れてって」と誘われ、滝の周辺をさまよう。

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