浅田逆転V ゴボウ先生残り1キロゴボウ抜き
フルマラソン30回目のベテラン浅田勝美(38=東京都)が、ゴール前1キロ地点で昨年優勝の神田哲広(29=東洋大職員)をかわし、2時間26分18秒で3年前の26回大会に続く劇的な逆転優勝を決めた。来年のベルリンマラソンに派遣される。神田は脱水症に陥りながら健闘して4位。女子は星野芳美(38=静岡陸協)が2位マイヤー(ベルリン)に17分の大差をつける2時間40分41秒で優勝した。
大逆転に沸くゴールへ、「5キロ17分台のマイペース」を最後の1歩まで守り通した逆転男浅田が走り込んできた。淡々とした表情だったが、テープを切った後で「これ、記念に欲しいんですけど」と、やっと笑顔になって係員に話しかけた。「前回はテープを切れなかったんです」。
浅田は3年前の26回大会でも、失速した先頭を39キロでとらえて逆転優勝した。周回遅れと混じりながらのあまりにもスムーズな逆転だったため「沿道の人もほとんど気付かず、ゴールにはテープが張られていなかった」そうだ。「でもこれで、今日は2回分、喜べます」。うれしそうだった。
晴れ渡って、風もない好条件だった。昨年勝者の神田が積極的に飛ばし、33キロ地点では、2位以下に7分の差を付けていたが、36キロで「全身がつって」脱水症状で失速。後方集団から追い上げていた浅田がゴール1キロ手前でかわした。
前回と同じパターンに、「あ、またかと思いながらラストを頑張りました」。
静岡県の天城湯が島の出身で実家はわさび農家。バレーボールやヨットの選手だったが、筑波大卒業後、東京都八王子市の共立女子第2中学・高校の体育教師になってから走り始めた。
初マラソンが16年前の河口湖で今年が参加12回目。東京国際も来年で10回連続出場となるベテランだ。
「昨年は調子が悪く、もう年かなと一時は悲観しましたが、思い直して筋トレを開始。今日がフルマラソン30回目なので、何か記念になることをしたいとは思ってました」。ランニング人生でも起死回生の逆転ランになった。
183センチ67キロの長身。生徒には親しみを込めて「ゴボウ」と呼ばれる。ゴボウ抜き優勝のゴボウ先生だ。
写真=右・ガッツポーズを見せながらテープを切る浅田勝美、左・優勝を果たし水谷さくらから月桂樹を受け取る浅田(撮影・水谷安孝)
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2位に17分差 星野ぶっちぎり
ぶっちぎりの優勝劇だった。星野が155センチ、46キロの小さな体を弾ませ、両手を突き上げてゴールした。後ろは1度も振り返っていない。何しろ2位とは17分19秒もの大差だった。「持てるものをすべて出し切ってスカッとした」。思わず笑みがこぼれた。
今回の参加は25日になって決めた。23日に栃木・大田原マラソンを制したばかり。2時間42分台の優勝タイムに満足できず、愚痴をこぼしていた。「それなら走ればいいじゃない」。聞き役に徹していた仲間からの一言で吹っ切れた。
12月5日に参加を予定していた沖縄・那覇マラソンを急きょキャンセル。静岡・沼津市の自宅をこの日朝5時30分に出て、3人の娘を市内のスイミングクラブの送り届けると、7時に河口湖入りした。「勝っておいでよ」との言葉に後押しされた。
高校時代も陸上部にいたが、30歳から再び走り始めて今月は3日の丹波30キロロード、14日横浜ハーフマラソンも制している。「やっぱり私は負けず嫌いなんだ」。そんな星野の性格がレース後も出ていた。同い年で五輪マラソン2大会連続メダル獲得の有森裕子が祝福に駆けつけた際のこと。「来年の岡山国体でハーフマラソンに出るそうですね。楽しみにしてますよ」。
写真=両手を広げてゴールテープを切る星野芳美(撮影・水谷安孝)
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■有森祐子が沿道から声援
92年バルセロナ五輪女子マラソン銀メダリスト、96年アトランタ銅メダリストの有森裕子が沿道から声援を送った。古傷の左ヒザの故障のためレースには参加できず「走れないのはつらい」と残念そうだった。それでも紅葉の景色を十分堪能できた。「原点を忘れかけた時に河口湖で市民ランナーの頑張る姿を見て自分を振り返るのもいい」と話した。来月23日の山陽女子ロードレース・有森裕子・人見絹枝カップでは、アトランタで金を獲得したロバ(エチオピア)銀のエゴロワ(ロシア)と再会の予定。来年地元岡山で開催される国体のハーフマラソンへの出場を希望している。「実は国体にまだ出たことがない。地元にも恩返ししたい」と意欲も見せていた。
■プロ、五輪代表 今中&福井がレース先導役
プロサイクリストでインターマックス代表の今中大介と、00年シドニー五輪トライアスロン日本代表の福井英郎が自転車にまたがってレースの先導役を務めた。今中は昨年に続いて2回目。ふだんのレースの半分以下の時速20キロ程度で安全運転に徹した。「河口湖は10年ほど前の練習コース。イベントの役に立てればいい」。福井は27日に現地入りするとすぐに湖畔を自転車で2周走った。「今度はフルマラソンにも出場したい」と駆け出しそうな口ぶりだった。
■30歳誕生日記念 伊藤が選手宣誓
この日、30歳の誕生日を迎えた伊藤英生(はなえ)が選手宣誓を務めた。1週間ほど前に電話で依頼され、自宅のある東京・大崎から勤務地の池袋までJR埼京線で通う最中にセリフを考えたという。夫卓郎とファンランに参加。「バースデー記念にと初めて出場しましたが、いい思い出になりました」と笑顔を見せていた。
■今年も「ザバス」サポート
「ザバス」でおなじみの明治製菓が今年もランナーを後押しした。コース内4カ所の給水ポイントに、水分とアミノ酸補給をサポートする「ザバスBCAAウォーター」が合計1万リットル、ブドウ糖が主成分で手軽にエネルギー補給ができる「ザバスエナジーアップタブ」114キロ、お菓子「きのこの山」「たけのこの里」各1200箱が用意された。ザバスステーションにはグリコーゲンリキッド1500本も置かれた。
同社の契約選手でトライアスロン女王の中西真知子(NTT東日本・NTT西日本)も給水所でお手伝いに駆けつけた。「せっかく練習して臨むのだから、最高のパフォーマンスを出すために給水、エネルギー補給をしっかりやってもらいたい」と重要性をPR。ファンランにも初めて参加した。「天気が良かったし富士山を見ながら気持ちよく走れた。来年もまた出てみたい」とも話していた。
■アイドル水谷さくら 4キロファンラン参加
グラビアアイドル水谷さくら(21)がファンランにゲスト参加した。「河口湖に来るのは初めて。富士山と紅葉がきれいだった」と笑顔を見せた。一般ランナーから声を掛けられながら約4キロを自分のペースで走った。「高校時代には最長で1キロくらいしか走ったことはなかった。走る前は何も分からず不安だったけど楽しかった」。レース後は表彰式のプレゼンターなどもこなしていた。
■海外から派遣コリン「富士山は最高」
海外姉妹・協力マラソンから、今年も数多くのランナーがやってきた。オーストラリア・メルボルンマラソンからの派遣女性選手コリン・ステファンス(55)は、河口湖マラソン11回目という大の日本好き。今回は故障のため、完走はならなかったが、「今日の富士山は最高、一生忘れられない」と感激していた。
■新町活況1周年
新町となって1周年を迎えた「富士河口湖町」が、活況を呈している。昨年11月、河口湖町、足和田村、勝山村が合併してできた新町は、富士山を囲む一大リゾート地に拡大。観光客も100万人以上増えた。小佐野常夫町長は、「観光地としての環境整備に努めている。5年以内に年間集客1000万人突破を図りたい」と力強く語っていた。
■豚汁1万食提供
レース後の体力回復には豚汁が一番。今年も全国農業協同組合連合会(JA全農)が、完走した選手たちに1万食の豚汁を提供した。富士河口湖町船津婦人会はじめ70人のボランティアが、前日から準備にあたった。ゴール後の選手たちは、具だくさんの豚汁に大喜び。「お代わり」の声を連発していた。
■市民密着の活動
今年から、総合家電メーカー「LG電子ジャパン」が協賛社に加わった。世界150カ国以上でビジネスを展開する「LG電子」の日本法人で、サッカーをはじめ、スポーツマーケティングを重視している。河口湖で同社が行ったアンケートには、ランナー1600人以上が回答する盛況ぶりだった。同社の高橋晃営業本部長は、「マラソンを通じて、市民に密着した活動ができました」と満足げだった。
■用品販売が好評
レース前日から、人だかりができていたのが、ミズノのスポーツ用品販売コーナー。レーシングシューズ、長そでシャツ、手袋などが飛ぶように売れた。「シャツはファスナータイプなど、ランナーのニーズに応えた品ぞろえが好評だった」(同社厚木営業所斉藤秀明氏)。前日買ったシューズで、42・195キロを完走する選手も多く、製品の高性能ぶりが光っていた。
◆◆お礼◆◆
「第29回河口湖日刊スポーツマラソン」は11月28日、山梨・河口湖周回のAIMS(国際マラソン協会)、日本陸連公認コースで無事終了することができました。山梨県、富士吉田警察署、河口湖消防署、各交通機関、県民、町民、そして関係の皆さまのご協力、ご声援に深く感謝します。
日刊スポーツ新聞社
富士河口湖町
山梨陸上競技協会
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