これが新しい裁判の形、分かりやすく迅速に
今回は裁判員制度の話。この内容って、どれだけの人が知ってるんだろうか? 今、最高裁が大規模なアンケートを行っていて、もうすぐ結果を発表すると思うんだけど、よく分かってない人の方が多いでしょ? オレだって、裁判員制度の説明会やらシンポジウムに行ってるけど、分からないことはたくさんあるし。
多くの人が内容を理解してないのが原因だと思うんだけど、あるアンケート結果を見ると「裁判員に参加したくない」と答えている人の理由が
〇法律のことを知らない素人が判断するのは無理
〇仕事があるので、長期間は無理
という2つが圧倒的に多いんですね。そんな2つの理由に答えるかのように、裁判が変わってきてるんです。「分かりやすく」「短期間で」。
先週はそんな裁判員制度のテストケースとも言える裁判が2つあったので、事件の内容より裁判のやり方をメーンにした傍聴記を。
1つめは、3月7日に行われた三田武敏被告人の初公判。罪名は傷害致死。自宅で4歳の長女に暴行を加え死亡させたとされるもので、被告人は自宅居間で娘の両足を持って振り回し、左側頭部をタンスにぶつけたという。被告人は「娘が冷蔵庫から勝手にアメなどお菓子を出して食べたので、しつけのためにやった。やりすぎた」と逮捕後、容疑を認めている。
あきれてしまうほどにひどい幼児虐待の事件です。
で、この裁判では「分かりやすく」するためにプロジェクターが使われていました。検察官が冒頭陳述を読み上げている途中のことです。
検察官 「被告人は、しつけと称して普段からゲンコツ・蹴る・尻を肩たたき棒でたたくなどの暴行を加えていました。そして、犯行ですが、こちらのプロジェクターを使って説明させていただきます」
もう1人の検察官がプロジェクターとパソコンの電源を入れると、スクリーンに映し出されたのは、部屋の見取り図。
検察官 「帰宅した被告人は、ゴミ箱に納豆の容器が捨てられてるのを発見し、勝手に冷蔵庫から食べ物を出したことに腹を立て、寝ている長女の足をつかみました」
次にスクリーンに映し出されたのは、被告人と長女、整理タンス。そして、その距離。
検察官 「この時、画面下にあります整理タンスと被告人の距離は1・07メートル」
等々、プロジェクターから投影される絵に合わせて、犯行の詳細が語られていました。
事件の内容が残酷なんで生々しく感じたところもあったけど「分かりやすい」という点で見れば、口頭だけで説明されるより、視覚に訴える方がいいかもしれないですね。
プロジェクターを使用するのは、去年から少しずつ増えてきてるので、裁判員制度が始まるころには主流になってるのかもしれないです。
2つめは9、10日に行われた神酒年雄被告人の初公判。罪名は殺人・窃盗。
16年前の90年11月に男性を刺殺したとして逮捕、起訴されたもので、事件当時、現場に刃物が残され、犯人のものとみられる血液が付着しており、当時、実用化されていなかった方法で、あらためて血液をDNA鑑定した結果、神酒被告人のものと一致。時効1カ月前に逮捕ということで、大きく報道された事件です。さらに、この事件は別のことでも報じられました。それは「公判前整理手続きを適用し、土日を除く6日間、連続開廷する」というもの。
“公判前整理手続き”っていうのは、初公判を開く前に証拠などを整理して、争う内容を絞ることなんだけど、これを適用して連日開廷するのは、初めてのケースです。
殺人事件の公判は判決までに半年以上かかるのが普通で、被告人が否認していれば数年かかることもあるんです。それが神酒被告人が否認しているのに、審理は1週間だけ。
で、裁判はスケジュールが前もって決まってるためか、目まぐるしいほどに証人が出廷しました。弁護士も検察官も、時間に追われてる感じでピリピリしてる印象を受けました。特に印象深かったのが、裁判官の一言です。3月10日の公判で証人が出廷した時、弁護士に向かって「え〜、時間が5分オーバーしてますので、焦点を絞って質問お願いします」と。5分くらいと思うんだけど、よほど時間に追われてるんでしょうね。
そして、公判の最後にはピリピリと張り詰めた緊張の糸が切れたのか、弁護人と検察官が大ゲンカ。急きょ予定になかった取り調べ官の証人尋問が認められると、
弁護士 「質問事項書(質問内容、返答を前もって提出するための書類)は出さなくてもいいですよね?」
すると5人の検察官が立ち上がって
検察官 「そんなのいいわけないでしょう!」
弁護士 「土日を挟んでなので、証人と接触できない可能性もありますし…」
検察官 「それは弁護人の言い分でしょ? 法律読んだことないのかよ…」
裁判官 「まぁまぁ…時間的にも厳しいと思いますが、提出していただけますでしょうか」
弁護士 「ただ、推測の答しか書けないと思いますけど」
検察官 「だから、それが質問事項書でしょ?」
弁護士 「推測で書いたものが、何の意味があるんですかねぇ」
と、事件とは関係ないことでヒートアップしてました。
このケンカが終わり、閉廷したのは予定より1時間もすぎた18時10分。途中で5分の遅れを気にしていた裁判官って…。
長期に渡って行われてる裁判もどうかと思うけど、無理に短くしようとするのも、ちょっと疑問を感じたなぁ。
とにかく、これが新しい裁判の形。
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