【第17回】
つめの間からでも菌は侵入する
予防接種のある感染症 破傷風
東京郊外に住む、K君は2歳4カ月になる外遊びの好きな元気な男の子。だが、数日前から風邪気味で少し元気がないように見えた。ママはそんなK君の顔を見つめてつぶやいた。「顔がいつもと違う。なんだか口元がだらっとしてる」。翌朝、K君はさらにぐったりしてしまった。水を飲ませようとすると、K君の口の脇から力なく水がこぼれたのだ。
驚いた両親はK君を抱え、近くの病院に駆け込んだ。その症状から、破傷風の疑いありと診断され、すぐ入院となった。医師は、菌の入った傷口を探したが、目に見える傷はない。ところが右足の親指のつめに炎症を発見。つめが黒っぽくなり浮き上がっていたため、つめの間のあかのように見えるものを調べたところ、やはり、破傷風の菌が発見された。
裸足での泥遊びが原因だったようだ。実は、赤ちゃんのころからK君はアトピーがあり、ママは予防接種をほとんど受けさせていなかった。K君は、破傷風の毒素を中和する点滴、抗生物質による治療、鼻から呼吸のためのチューブを入れるなど、懸命な治療の結果、一命をとりとめたが、入院期間は1カ月に及んだ。
「傷がなくともつめの間などから破傷風菌が入ることがあります。DPTという予防接種をしていなかったことが問題です」と話すのは東京都葛飾区亀有の永寿堂医院の松永貞一医師。「日本の破傷風は減っていますが、例えば01年には80人が発症し、死亡者も12人です。土の中にいる破傷風菌が傷口に入って感染すると菌が毒素を出し、神経に障害が出るのが特徴です」。
実はK君の顔つきが変だったのも、この毒素のため。さらに破傷風は免疫がなければ大人もかかる恐い病気だ。「ささくれ程度の小さな傷でも、土から感染したり、古釘の刺し傷などからも感染する危険性があるので注意しましょう」と松永医師はアドバイスする。免疫の効果は5〜10年なので、子供のころに接種をしていても、土に触れる機会が多い大人は注意し、医師に相談して接種を受けよう。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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