【第24回】
病原体そのものが原料
予防接種 ワクチン
人間は80年近く生きても、多くて3〜4代の子孫としか顔を合わせない。ところが同じ地球上にすむ生物であるウイルスや細菌などの病原体は、こと「増殖」に関してはめっぽう効率がいい。
病原体は、私たちの体に入り込んだり、温度や湿度、栄養などが気に入った場所に取り付くと、すごい勢いで自分のコピーをつくりだす。例えば体に入ったインフルエンザのウイルスは8〜12時間の間に何百、何千ものコピーをつくり、取り付いた場所に炎症を起こすのだ。生き物が自分の子孫をつくるために必要な情報は、遺伝子の中に入っているが、病原体の体はシンプルな遺伝子そのもの。その上ちゃっかり環境に適応するので、まるで書類をコピーするように複製できる。
また増えるたびに毒素まで出す病原体もいるので、取り付かれた方はたまらない。この病原体が体に入って増殖するのを、医学的にストップする「ディフェンス」の役割をするのがワクチンだ。ワクチンは病原体に対する抵抗力を体内につくり、病原体の増殖を止める役目をする。病原体を弱めたり、殺したりしたものを原料につくったのがワクチンだ。健康な体にワクチンを入れて病気が予防できるのだろうか。
「ワクチンはウイルスや細菌を加工したものですから、病原体による自然な感染とは違います。ワクチンを接種すると、免疫をつくるのに必要な量だけが体に入りますが、もちろん発病するほどではありません」と説明するのは、米国の小児科医が書いた「予防接種は安全か」(日本評論社刊)を監訳した国立三重病院の神谷斉院長だ。
ワクチンには、増殖力を人工的に弱めた「生ワクチン」、菌を殺した「不活化ワクチン」、細菌の毒素を無毒化した「トキソノイド」という3タイプがあるが、いずれも本来の病原体の増殖力を大幅に弱めたり、なくしたりしたものだ。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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