【第25回】
本物の敵に備え前もって守り固める
予防接種 ワクチン
「スポーツに勝つには、努力と根性が一番大事」と考えられていた時代もあった。だが、それはもう昔のこと。最近は、サッカーでも野球でも格闘技でも体力や技術の上に、敵を知り、研究した上で、戦略を考える情報戦が不可欠だ。
実は感染症の予防や治療も、スポーツの情報戦に少し似たところがある。感染症の専門医、国立三重病院の神谷斉院長に聞いた。
Q・予防接種で、ワクチンを打つと病気にかかりにくくなるといいますが、ワクチンは何でできているのですか?
A・ワクチンは、元の病原体の増殖力を弱めたり、病原体を殺したりしてつくったものです。
Q・どうやって敵である病原体の情報が分かるのですか?
A・ワクチンを打つと、体が病原体を認識し、その敵に対抗するための作戦を立てます。いろいろなワクチンを打てば作戦も増えます。これが病原体の情報を得て、体の中に抗体(抵抗力)をつくるということです。
Q・なぜ情報の認識で病気が予防できるのですか?
A・ワクチンはそれぞれのウイルスのたん白質の情報や細菌では外膜にある多糖体の情報(いずれも病原体の成分)を体に提供します。それを認識することで体の中に抵抗力をつくり、敵に対抗するのです。
Q・本物の敵が来てからではダメなのでしょうか?
A・体は初めての敵の時も頑張って侵入を防ぐ努力はするのですが、初対面だと相手のことが分かるまでに時間がかかるため、その間に攻撃されてしまいます。
Q・感染症の時は急がなければいけない場合が多いということですね。
A・そうです。病原体の増殖が素早いものが多いためです。敵の姿、動きや性質、増殖の早さ、そして弱点は何かといった情報があらかじめあれば、有利に戦えます。本物の敵が来た時に備えてディフェンス方法を決めておくために行うのが、ワクチン接種です。また、体内の戦いを有利に展開するためには、情報だけでなく、日頃の健康管理、体力や気力も大事です。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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