【第27回】
大人がかかると妊娠能力低下も
任意予防接種 おたふくかぜ
テレビ局のアシスタントディレクターとして働くK子さん(26)は、連日深夜に及ぶ仕事が続いていて少しバテ気味だった。頭痛がして風邪かなと思ったが、市販の風邪薬や鎮痛剤をのんで仕事を続けていた。
こんな状態が10日ほど続いたある朝、K子さんは息苦しさで目が覚めた。体が熱く重い。起き上がって洗面所で鏡を見ると、ガーン! 顔の下半分が大きく腫れ上がっているではないか。ツバを飲み込むことができないほど、耳からのどまでが腫れていた。「おたふくかぜかもしれないが、子供のころの記録があれば確かめた方がいい」と医師は診断した。
K子さんが九州の実家の母親に電話してみると、おたふくかぜは5歳のころにすでにかかったと言う。結局K子さんの病気は、おたふくかぜではなく、細菌性の化のう性リンパ節炎であることが分かり、入院して抗生物質を点滴する治療をしたが、退院までは1カ月もかかった。
「おたふくかぜは、流行性耳下腺炎と呼ばれムンプスウイルスの感染によるものです。これは主に全身の分泌組織を侵すウイルスで、耳下腺炎や顎(がく)下腺炎ばかりでなく、睾(こう)丸炎、膵(すい)炎、卵巣炎、随膜炎を合併する事があります。深刻な後遺症として音を聞く神経がやられてしまうと聴力障害が残ります」と東京都葛飾区の永寿堂医院、松永貞一医師は説明する。
「時々おたふくかぜに2度なったという人がいますが、原則として2度はかかりません。2度目以降に耳下腺が腫れるのは反復性耳下腺炎と診断し、原因はムンプスウイルスではなく別のウイルスや細菌などによる感染と考えられます。これは通常、他人にはうつりません」。
おたふくかぜは小学生以下の子供が多くかかる病気だが、大人がなると睾丸炎や髄膜炎などを合併して重症化しやすい。男女ともに妊娠能力が低下することもあると言われる、要注意の病気だ。
【ジャーナリスト 月崎時央】
|