【第28回】
老人、糖尿、心臓病の人に推奨
任意予防接種 肺炎球菌
1人暮らしのT子さん(76)は、毎日自炊も買い物もこなす元気なおばあちゃんだが、ここ数年、冬になると毎年かぜを引いて、1週間ほど寝込んでしまうようになった。気管支が弱く、かぜを引くとせきがとまらなくなることもあり、気温が急に下がる12月は特に不安な季節だと言う。
冬になると、お年寄りがかぜをこじらせ「肺炎」で亡くなったというニュースを頻繁に目にする。肺炎とは、ウイルス、細菌などの微生物によって肺の組織が炎症を起こす病気のことだ。この肺炎の原因となる菌で最も多いのが肺炎球菌だ。中耳炎、気管支炎などの原因菌として専門家にとっては日常的な菌だが、その名は一般にはあまり知られていない。
肺炎球菌を治療するにはペニシリンなどの抗生物質がよく使われるが、抗生物質の使いすぎによって、ペニシリンが効きにくい菌も増えているという。肺炎球菌には80以上の型があり、このワクチンはその中でも感染者が多い23の型を対象にしているが、これにより肺炎球菌による肺炎の6〜8割を予防できるといわれている。
肺炎球菌ワクチンは、米国では65歳以上の老人に推奨されている。米国在住の感染症科専門医の五味晴美医師は「お年寄りや肺炎になるリスクのある方は、事前にワクチンで予防することがとても大切です。肺炎球菌による肺炎は、重症になると死にいたることもあります。65歳以上の方や、もともと糖尿病や心臓や肺などに病気のある方には、特にワクチンをお勧めしています」とアドバイスする。
米国では、老人や肺炎球菌による肺炎のリスクの高い人には、5年おきに接種が推奨され実施されている。だが日本では、肺炎球菌予防接種はアレルギー反応などが出る可能性があるとされているため、今のところ一生の間に1回しか接種できないことになっている。お年寄りはまず、かかりつけのお医者さんに相談してみよう。
【ジャーナリスト 月崎時央】
|