【第32回】
爪はバイキンの溜まり場
食中毒
クレジットカード会社で、クレーム処理のアルバイトをしているK子さん(22)は、冬でもヘソ出しジーンズで来社する。明るい性格で、仕事もよくこなすが、髪は金髪で、手には長い付け爪(つめ)をしている。爪全体を黒に塗ったり、ピカピカの宝石を張っている日もある。同僚のパート主婦の「その手でお米はとげないわよね」という皮肉をよそに、仕事中にも爪にたまったあかを掃除するマイペースぶり。
ところがこのK子さんが突然、原因不明の激しい下痢に襲われ、入院することになった。検査の結果によると、小型球形ウイルスというウイルスの感染による食中毒だという。
1人暮らしなので入院も心細いだろうと、パート仲間の主婦3人でお見舞いにいくと、K子さんは化粧っけのない童顔で、点滴を腕に刺して寝ていた。「大丈夫? かわいそうにやっぱりおへそ出しているから冷えたんじゃない」と3人。ところが「点滴なんて平気なの。でも先生が不潔だから治るまで爪は取りなさいって…。チョ〜ヤダ、この爪。早く治って元通りの手になりたい」と言うK子さんはほとんど涙目だ。いつものワシのような手ではなく、爪の先を丸く切り、赤ちゃんの手になっていた。
爪は、バイキンのたまりやすい場所だ。K子さんの食中毒の原因と爪の関係は不明ではあるが、米国では医療関係者が付け爪をしていて患者さんに感染が広がった事例もあるという。
感染症に詳しい新潟県立六日町病院の市川高夫医師は「感染症の防止は手洗いが基本です。普段から、爪は指先を反対の手のひらにこすりつけて、間までよく洗う必要があります。また、長い爪や付け爪の接着部位の汚れは落としづらく、病原体のすみかになりやすいですね。入院したら付け爪などをやめるだけでなく、爪を短く切って清潔を心掛けてください」とアドバイスする。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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