【第30回】
何を話しても秘密は守られる
カウンセリング(中)
心身症に対し、心療内科では薬物療法と心理療法を両輪として治療が行われる。その心理療法の中で、基本的治療となるのがカウンセリングである。カウンセリングには臨床心理士、心理療法士といわれる人が医師や看護師とチームを組んで治療に参加し、柱となる。
「“カウンセラーは鏡である”という言葉があります。ごはん粒が口の周囲についていても気付きません。鏡を見て気付くのです。そのように、患者さんの心の問題、それも何が問題なのかを明確に分かるようにしてあげるのがカウンセリングです」と、九段坂病院(東京都千代田区九段南)心療内科の臨床心理士・森下勇氏はいう。
患者はカウンセラーに対して言葉にして話す。実は、そのこと自体が自分の気持ちを整理することになっている。「気持ちの中の引き出しを整理できるようにしてあげるのです。状況をつくってあげるのです」。それには「ただただ患者さんの話を聴くのです。ありのままを聴くという態度が必要なのです。傾聴です。今まで誰にも話せなかったことを言葉にするということは、心的緊張をやわらげることになります。一般的には患者さんには指示は与えません」。
つまり、心身症患者は感情の抑圧でグチさえも言えなかったのだ。だから、心療内科の診察室やカウンセリングルームでは、話し声が外に漏れないようにされている。これは他科との大きな違いである。「心療内科の診察室やカウンセリングルームでは、患者さんは何を話しても秘密は守られます。だから、上司の悪口を言ってもいいのです」。
気持ちを吐露すると、人はそれだけでもかなり楽になる。「発散があって、気持ちの整理です。そして、次がこれからどうするか…。それを考えてもらうことで自我を強くし、自分の決断のもとに歩み出してもらいます」。歩み出せるようになると、回復したといえるのである。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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