【第41回】
緊張で悪化、開き直りが大切
多汗症(上)
「手に汗握る…」。こんな表現がある。その言葉通り、緊張した場面では手のひらに汗をかくものだが、それを普段もずっとかいている人が…。それも半端な汗の量ではない。
商社の営業所の事務員をしているA子さん(23)は、小学校5、6年のころから、手が常にしっとり湿っており、ときどきぐっしょり汗ばむことに気付いた。それも多少の湿り具合ではない。汗のために手のひらの皮膚がふやけ、ポロポロとはがれてしまう。
夏場ほど重症で、A子さんは子供ごころに「手袋をしていたい。そして、誰とも握手をしたくない。でも、夏場に手袋をしていると、余計に変に思われるし…」と、悩んでいたという。高校生ごろからは、手のひらの皮膚がボロボロはがれていくことはなくなったものの、OLになってからも、ハンカチを握って文字を書かないと汗で書類が汚れたり、破れてしまう。
テレビなどで多汗症のことを知り、A子さんは近くの心療内科を受診した。医師の問診で、A子さんの性格や背景が次第に分かってきた。A子さんは他人にちょっと何か言われると、それをいつまでもクヨクヨと悩んでしまう。また、何か事があった後に、ああすれば良かった、こうすれば良かったと、後悔の日々を過ごしてしまう。仕事が嫌になってしまったり、不眠に悩んだこともあった。
基本的に、A子さんは「自分を多少犠牲にしても、他人の面倒をみるような優しさのあるタイプ」だった。また、家庭環境的には、A子さんは高校時代に病気で母親を亡くしていた。
心療内科医は母親的な優しさでA子さんに接し、A子さんの訴えに耳を傾けた。そして「緊張などの心理的要因で多汗症は悪化する」ことを、A子さんに十分に理解してもらい、逆に開き直るように指導した。さらに自律訓練法、カウンセリング、漢方薬が処方された。A子さんの多汗症の症状は、8カ月後には仕事中のみにまで改善した。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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