【第43回】
ストレスで口が開けられない
顎関節症(上)
齒科の疾患で「顎(がく)関節症」はすっかり浸透した病気になった。「口が開けにくい」「コキコキ、クリッといった雑音が口を開け閉めするときに出る」「あごの関節部が痛い」…などの症状を訴えて患者は受診する。
昨年4月にデパートに就職したB子さん(23)は、4カ月後、あご関節部から雑音の出ることに気付いた。同時に口があけにくくなった。ある休日。母親が昼食にすしをとってくれ、2人でまずは大好きな中トロに手を伸ばし、口へ運んだ。すると、B子さんの口に、これまではスルリと入っていたはずのすしが入らないのだ。すしの大きさ以上にB子さんの口が開いていない。B子さんはもっと大きく口を開けようとした。ところが、あご関節部が痛んでそれ以上開かない。結局、その日はすしを包丁で4分割して口に入れた。
そして、次の休日に日大歯科病院(東京都千代田区)口腔診断科を受診した。「顎関節症の原因には5つほどあります。第1は顎関節の位置の異常と形態の異常。第2は慢性外傷性病変などによる咬(こう)合異常。第3は筋の異常な緊張。第4は神経筋機構の問題。そして第5は精神面の問題です。検査は5つほどの原因すべてを疑って行います」。
結果、B子さんの場合は精神面が大きく関与していた。大事に育てられてきたとあって、職場になかなかとけこめなかった。毎日が緊張の連続で、何をするにも「失敗したらどうしよう」と不安が先に立つ。女性の上司は、最初が肝心とばかりに、すべてに厳しいチェックを入れる。そんなストレスを学生時代の仲間と会ってワーッと発散しようにも、休日が異なるのでそれもできない。結局、顎関節症という心身症となってB子さんを襲った。
「B子さんの場合はカウンセリングと薬物療法。それに、静かにしているときはB子さん用につくったスプリントを使ってもらうようにしました」。治療のかいあって、B子さんは約6カ月で回復した。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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