【第48回】
口以外にも全身チェックを
舌痛症(下)
ストレス過多の今日、社会心理的な影響は口の中にも影を落とす。その1つが口腔(こうくう)心身症の1つ「舌痛症」である。舌の先、あるいは舌の左右どちらかにひりひり感、しゃく熱感などの痛みが起きる。「この舌の痛みの場合、まずは舌痛症か、舌の疼(とう)痛症かの区別をすることが大事です」と、日大歯科病院(東京都千代田区)口腔診断科の後藤實助教授は言う。
疼痛症には、明らかな原因がある。鉄欠乏症貧血や悪性貧血でも舌の痛みは引き起こされるし、シェーグレン症候群(だ液腺や涙腺などの分泌障害症状を主症状とする外分泌の慢性炎症性疾患。膠原=こうげん=病の1つ)、ビタミン不足、アレルギー性鼻炎などでも痛みは起きる。さらに、抜いた歯と歯の間に舌が入り込む、ブリッジのギザギザに舌が刺激される、かみ合わせが以前と異なるなども疼痛症の原因になっている。
「溝舌」のケースもある。「舌に溝ができてくるもので、この場合は溝の数と深さによって1度から4度にまで分類しています。4度になると溝が深くなり、痛みが出ます。これはストレスとは関係ありませんが、痛みが増して治らないと、それがストレスになって広義の心身症になることはあります」。
だから、検査は口腔内のみならず、全身をチェックした後、舌痛症と診断される。患者は40歳以上や閉経前後の女性、50歳前後の男性に多い。子供の問題や家庭の問題など、いろいろ悩みの多い年代である。
「きっかけは不安な状態やうつ病。それが痛みや病気を引き起こすのです。そして、治療を進める上で重要なのは2つ。舌痛症の人は鏡で自分の舌をよく確認するので、それを絶対にしないと約束してもらいます。もう1つは痛むときの状況を知ってもらう」。
実は、眠れないときや不安なときに想像ができないような痛みに襲われる。それを自覚してもらって安定剤などの薬物療法、心理テストを用いてさまざまなアプローチをすることで、少しずつ回復に向かう。不安がもたらす舌痛症。これも早期発見、早期治療が大事である。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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