【第64回】
責任感強い人陥りやすい
朝刊症候群
情報戦争の真っただ中にいるビジネスマンの朝は、まずは朝刊を手にして新しい情報を収集することから始まる。それでなくとも忙しい朝とあって、朝食をとりながら新聞を読むタイプもいる。忙しくても、この朝刊を読むのが日課になっていて、意識はしていないものの、どこかに楽しさがある。
ところが、ある日を境に、朝刊を読むのが嫌になって、活字を目で追えなくなってしまう。これが軽症うつ病の「朝刊症候群」である。なにも中高年ばかりを襲うとは限らない。若いビジネスマンをも容赦なく襲う。
食品メーカーに勤めるA男さん(31)は会社の独身寮に入っていた。大の野球ファン、松井ファンで一般紙とともにスポーツ新聞も愛読していた。ところが、松井が満塁本塁打を打っても、新聞を読む気になれなくなってしまった。これが、変調の始まりだった。
そのうちに朝起きるのもつらくなり、次第に会社を休む日が多くなってきた。体調が悪く会社を休むと、独身寮の同僚に伝えてもらう。だが、同僚が独身寮に戻ってくると、A男さんは元気になっている。酒の誘いも断らない。翌朝は大丈夫だろうとA男さん自身も同僚も思うが、朝になるとまた体調は思わしくない。
何とか出社できてもミスの連続で、同僚の足を引っ張ってしまう。同僚の1人が上司に「うつ病では…」と進言。A男さんは上司の勧めで精神科を受診した。やはり軽症うつ病で「朝刊症候群」だった。
朝刊症候群に陥るタイプは、きちょうめんで仕事に対して責任感の強い人が多い。A男さんはまさにそのタイプだった。寮の中での和を重んじるばかりに、実は酒の付き合いを断れずに参加。それが心の負担になっていたことが、カウンセリングで分かった。
A男さんは抗うつ薬を服用し、規則正しいリズムのある生活をすることにした。そして、ゆっくり休むことで5カ月後には、朝刊が待ち遠しい日々に戻ることができた。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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