【第68回】
自覚が大切、職場ストレス
腰痛(心身症)
リストラや実力主義など年功序列が崩れた職場環境は、人々に過大なストレスをもたらし、心身に悪影響を及ぼしている。
海外駐在を命じられた40代のAさんは、現地で新規事業の立ち上げのため奔走していた。そんなある日、打ち合わせに向かおうとした途端、急に腰に激痛が走った。初めは「ギックリ腰か?」と思ったが、腰痛は日増しに重くなるばかり。だが、病院で検査を受けたものの、異常なしと診断されてしまう。腰痛は一向によくなる気配はない。数箇所の病院を受診したが原因はわからず、結局、帰国して精密検査を受けることに…。
ところが、日本の病院でも検査結果は異常なし。腰痛を抱えてくたびれ果てたAさんは、医師から心療内科への受診を勧められた。カウンセリングなどを受けて、腰痛の原因が心身症であることが判明した−。
「症状が出たのは、職場のストレスが原因。そう自覚できない方が最近は増えています。腰痛だけでなく、不整脈や高血圧、高脂血症、頭痛など、多くは自律神経系に関わる症状が生じ、職場で優秀な人たちがダウンしてしまうケースが多くなっているのです」と、国立精神・神経センター国府台病院(千葉県市川市)の石川俊男部長は説明する。
Aさんは職場から離れた地方の診療所で転地療養をし、すっかり腰痛も治った。2カ月後には職場復帰。しかし、同じ職場に戻れば元のもくあみという人も増加しているのだ。
「多くの場合は、規則正しい食生活にし、生活のリズムを取り戻すことで症状はよくなります。ところが、その段階で復帰をすると、再び同じストレスにさらされ、再発してしまう人がいるのです」(石川部長)。
優秀な人々は、従来から仕事をハードにこなしている。職場復帰を果たすと周囲からの期待も大きい。本人も「またがんばりますからよろしく!」と、仕事に打ち込み、以前と同じようなストレスを抱えることになる。そして、再びダウン。
「120%の力で行っていた仕事を70〜80%に抑え、質の高い仕事内容にすることが必要です。この復帰の仕方がとても大切。そのスタイルで3年ほど過ごせば、健康で充実したものにすることが可能です」(石川部長)。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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