【第75回】
「地震」「戦争」極限状態で急増する突然死
急性心筋梗塞(上)
ストレスにはさまざまなものがある。その中で“巨大ストレス”は、どのような状況下で起こりうるのだろうか−。大地震もあるが「戦争」もその1つ。実際、ミサイル攻撃を受けたときに突然死が急増することが分かっている。極限状態のストレスに対する循環器の反応である。
この報告は英国の有名な医学雑誌「ランセット」に発表された。91年1月17日、湾岸戦争がぼっ発。翌18日にはイラクがイスラエルに対してミサイル攻撃を行った。かねて警告されていたため、イスラエル市民は開戦と同時に、いつくるかもしれぬミサイル攻撃の恐怖に体を震わせていた。そんな矢先のミサイル攻撃だった。
専門家は、テルアビブの北東24キロの場所にある第3次医療センター(病床数550)に運び込まれた急性心筋梗塞(こうそく)患者の数を調べた。病院のある地域は、幸いミサイルの落下はなかったものの、爆発音は聞こえていた。その状況下で、1月17日から1月25日までの間、その病院に運び込まれてきた急性心筋梗塞患者は、直前の1週間などほかの5つの期間のどれと比較しても約2倍に増加していたのである。いかに戦争によって受けるストレスが大きいか、十分に分かろうというもの。
ただ、湾岸戦争でミサイル攻撃を受けたのはイスラエルだけではない。多国籍軍の発射したミサイルはバグダッドにも雨あられのように落下した。その攻撃の数、ミサイル落下の数では、バグダッドの方が数段厳しい状況だった。
バグダッドでどれほどの急性心筋梗塞患者が出たかは、調べられていない。が、専門家たちの推測では「イスラエルよりはるかに多くの人々が急性心筋梗塞を起こして運び込まれていただろう」。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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