【第76回】
ストレスと関係する突然死
急性心筋梗塞(下)
戦争、自然災害の恐怖…。そのストレスが多くの突然死に結びつくことは、世界の有力医学雑誌に発表されている。だが、ビジネスマンにとっては、長く勤めた会社をリストラされるのも、戦争のストレスと同じと考えられなくもない。
ビジネスマンの突然死で、ストレスとの関係をはっきりと示す医学的資料が残されていることは、きわめてまれである。そのまれなケースを紹介しよう。北欧の医学雑誌が報告した症例である。
ビジネスマンのAさんは70歳。急性心筋梗塞(こうそく)の発作をこれまでに2回経験していた。治療薬β遮断薬メトプロロールの臨床試験に協力していた。検査入院が終わり、Aさんは退院した。その当日は、心電図連続記録装置を体に装着していた。
午後11時、奥さんが就寝。このときは全く異常はなかった。午後11時24分。Aさんは病院へ電話をかけた。とても重要な書類を入れたケースが見あたらず。病院に忘れてきたと思ったからである。Aさんは電話口に出た相手に自分の名前を告げるのを忘れるほど、興奮していた。病院側は電話を通話中のまま病室をくまなく探してくれた。午後11時40分、電話口からAさんのうめき声が聞こえた後、通話は途切れてしまった。午前0時15分。何げなく起きてきた奥さんがAさんを発見。Aさんは床に倒れ、息絶えていた。
このように時間的状況がはっきり分かったのは、Aさんが心電図連続記録装置を体に装着していたからだ。心電図からは、Aさんが重要書類の紛失に気付いたときから、そのストレスが原因で不整脈が誘発されていたのが読み取れた。このようにストレスが短時間で突然死に結びつくことが、Aさんのケースではっきりした。突然死を解明する上で、重要なカギになると思われる。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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