【第81回】
悲観的にさせず長所を伸ばす
森田療法
神経症の治療法として1920年代に精神科医の森田正馬(まさたけ)氏によって確立されたのが森田療法だ。神経質で考え込むあまりに心が病んでしまう。このような患者に対して、昔から用いられている療法である。
「人は誰でも、幸せになりたい、健康でいたい、立派な人になりたいなどの『生の欲望』を持っています。それが建設的な方法に発揮されればいいのですが、そうではない人もいます」と、ひもろぎ心のクリニック(東京都豊島区)の渡部芳徳理事長は言う。では、“そうではない人”とは。「頭痛がすると重大な病気ではないかと考えて治すことにこだわるあまり、日常生活に支障が生じる人がいるのです。そういう方々に対して、建設的な生き方ができるようにするのが、森田療法の基本的な考え方なのです」。
神経質の素質者は「生の欲望」をより強く持っていて、「自己中心的」「心配性」「完全主義者」といった特徴を持っている。「そのため、ちょっとした頭痛や息切れ、心拍数が速くなるなど、身体機能の正常な範囲内でも変化はあるものですが、それが異常だと強く感じて心のバランスが崩れてしまうのです。本人は、その症状による苦しみから逃れたいと思うあまり、逆に症状にとらわれてしまいます。頭痛をどうにかして忘れようと思うあまり、逆に頭痛が気になって仕事が手につかないのです」。
精神科や心療内科で森田療法を行っている所でこの療法を受けると、まず、医師は徹底的に検査を行った後に、体に異常のないことを保証する。
次に、症状が身体機能の正常な範囲内で起きており、病的な事実がないことをしっかり証明する。その上で、どうしようもない症状はそのままに、現実的な問題、たとえば悩みの原因が仕事のことならそれを解決するよう動くべき、と生活態度に指針を与える。
「症状が軽減されるまでに数カ月かかることも当然あります。性格を変えるのではなく、長所を伸ばす方法、これが森田療法なのです」。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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