【第34回】
予期不安が再発の引き金
過換気症候群(上)
“ハギトモ”の愛称で知られる水泳の萩原智子選手。2年前、大会中のプールサイドで倒れてしまった。突然、呼吸が激しくなり意識がもうろうとなってしまったのである。過換気症候群と診断された。
自分の意思とは無関係に呼吸が早くなり、動悸(き)胸の圧迫感、手足のしびれなどが生じ、ひどい時は全身けいれんや意識の消失まで伴うのが、この過換気症候群。命にかかわる病気ではないが、強い発作症状なのでパニック状態になることが多い。
「過剰な呼吸により二酸化炭素が排出されすぎて起こる症状です。二酸化炭素濃度が低下すると、血液は異常にアルカリ性に傾き、脳の血管が収縮してしまい、さまざま身体症状が表れるのです」と説明するのは、精神科医で国際ストレスマネジメント連盟の日本代表理事を務める丸野廣医師。
呼吸器系心身症に分類され、その中でも頻度は高いとされている。疫学調査では10代後半から20代の若い女性に多いが、最近は男性や子供、高齢者にも見られるようになってきた。発作症状は放っておくと数十分続くこともあるが、やがて収まる。収まった後で検査をしても特に異状は見当たらない。
ただ症状が激しいだけに「また発作が起こるのではと不安になります。予期不安と呼んでいますが、その不安感が再発の引き金になるという悪循環をもたらすことがあります」と丸野医師。
心理的なものが原因となって呼吸中枢や自律神経が乱れ、過換気症状が起こるとされるが、それだけで説明できない部分もある。
「過換気症候群は古くから知られ、治療法もあります。肺や脳の機能異常に由来する過換気症状もあるので、しっかりとした診断を受けてください」と丸野医師はアドバイスする。
萩原智子選手も休養後、レースに復帰。このほど引退表明した。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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