【第43回】
40歳以上がリスク高いピロリ菌感染
胃潰瘍(上)
胃潰瘍(かいよう)は、昔から知られる病気である。古代ギリシャの文献に貝殻の粉末を飲む治療法が記載されている。貝殻は炭酸カルシウムが含まれている。胃酸を中和し症状を緩和させていたらしい。
胃に限らず食べ物の通り道である消化管の内側は、粘膜で覆われている。その下は粘膜筋板、粘膜下層、筋層、漿(しょう)膜といった部分で構成され壁を形成している。潰瘍とは、この壁がさまざまな原因で傷つき、えぐられた状態をさす。
福生吉裕・博慈会老人病研究所(東京・足立区)所長は「一般的には傷は粘膜下層より深くなった状態を潰瘍、粘膜下層に達していないものは、びらんと呼んでいます。十二指腸潰瘍もその症状は似ているので臨床的には胃・十二指腸潰瘍、または消化性潰瘍と総称します」と説明する。
胃潰瘍は日本人に多いことでも知られる。厚生労働省の患者調査では、胃・十二指腸潰瘍の治療を受けている総患者数(2002年10月)は78万2000人(男45万2000人、女33万人)。自覚症状のないものを含めると20人に1人は、一生のうち1度は消化性潰瘍に見舞われているともいわれている。
世界的に古くから知られている病気だけに原因究明も進んでいるが、時代とともに強調されるポイントが微妙に違う。胃酸過多説、ストレス説、バランス説、ピロリ菌感染説などがあり、「どれも胃潰瘍を起こす原因になっていますが、最近はピロリ菌感染がクローズアップされています」と福生所長はいう。
ピロリ菌は80年代に発見された胃にすみつく細菌。幼児期に感染し、環境衛生とかかわりがある。下水道普及率の低い国ほどピロリ菌感染率が高い。日本は先進国の中では際立って感染率(約70%)が高い。「特に昭和30年代より以前に生まれた人に多いですね。下水道普及や環境衛生が良くなった時に生まれた20〜30歳代の感染率は20〜40%と低くなっています。40歳以上は胃潰瘍のリスクが高い、といえそうですね」(福生所長)。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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