【第44回】
ピロリ菌が起こす胃炎が発症の原因に
胃潰瘍(中)
胃潰瘍(かいよう)になる原因としてクローズアップされているピロリ菌は、WHO(世界保健機関)が1994年に発がん物質にも指定している。NIH(米国立衛生研究所)では潰瘍患者の治療には、ピロリ菌除菌をすべきとの勧告を出している。厚生労働省も昨年4月に胃潰瘍診療ガイドラインをまとめ、ピロリ菌の除菌を最優先の治療
法に位置づけている。
福生吉裕・博慈会老人病研究所(東京・足立区)所長は「ピロリ菌はPH2・0という強酸の中でも生存する、ある意味ですごい菌です。感染しても必ずしも胃潰瘍になるわけではありませんが、危険因子としての解明が進んでいるのも確か」という。
ピロリ菌を発見した豪州のマーシャル博士は、胃潰瘍の70%、十二指腸潰瘍の92%はピロリ菌が原因としている。胃潰瘍患者の8割にピロリ菌感染が認められるという報告もある。
尿素を分解してアンモニアを出すピロリ菌がすみつく粘膜は、慢性的な炎症を起こす。ピロリ菌を攻撃する好中球やリンパ球が出す活性酸素なども粘膜細胞を変性させ、胃炎を招くことも判明している。
「慢性胃炎の状態が続くと粘膜が委縮します。ほとんどの場合、自覚症状がないので進行してしまいます。粘膜が委縮すると血流が悪くなりため抵抗力が落ち、胃酸の影響も強く受けます。胃潰瘍になる大きな原因です」と福生所長。
もちろんピロリ菌感染者が必ず胃潰瘍になるわけではない。感染者数との割合からすれば2〜3%にとどまっている。ピロリ菌感染による委縮性胃炎が下地になって胃潰瘍のリスクが高い状態にある、というべきかも知れない。
「胃潰瘍に再発が多いのもピロリ菌の影響と考えられます。除菌後の再発率低下もその実証になっています」(福生所長)。
胃潰瘍の発症はピロリ菌だけを考えるわけにはいかない。ストレス、胃酸過多を招く食生活、飲酒、喫煙など環境因子が大きい。ピロリ菌に感染していない若い人に十二指腸潰瘍患者が多くみられるのも、それを証明している。
【ジャーナリスト 小野隆司】
|