【第45回】
慢性的な炎症が胃がんにつながることも
胃潰瘍(下)
昨年4月に示された胃潰瘍(かいよう)診療ガイドライン(厚生労働省研究班)は、ピロリ菌の除菌を最優先の治療法に挙げている。除菌は2種類の抗生物質とプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使う3剤併用療法が基準療法。2000年11月から胃・十二指腸潰瘍の治療として保険適応になっている。朝・夕食後の2回に分けて服用し、1週間の治療を行う。
福生吉裕・博慈会老人病研究所(東京・足立区)所長は「厚生労働省の臨床治験成績では胃潰瘍で87・5%、十二指腸潰瘍で91・1%の除菌成功率となっています。胃がん予防を目的にした除菌治療はできないことになっていますが、早期胃がん患者の9割以上にピロリ菌がいるとの報告もあるので、今後の課題でしょう」という。
日本未病システム学会常任理事として病気予防研究に取り組む福生所長は、八丈島の住民検診を行い、胃疾患が少なくピロリ菌感染もまた少ないことを調べている。その理由は八丈島特有の食生活にあるらしい。「アシタバ成分のカルコンにはピロリ菌の発育抑制作用があるのです」という。食品成分の抗ピロリ菌作用の研究は今後、期待されている分野だ。
胃潰瘍になった際の治療は、PPIやH2ブロッカーなど胃酸の分泌を抑える抑制薬を使うのが主流。消炎鎮痛剤の服用などが原因となる急性胃潰瘍は、潰瘍が胃壁の浅い部分に多発する特徴があるが、胃酸の分泌抑制薬を使うと短期間で治る例が多い。胃に穴が開き腹膜炎を合併するほど進行すれば、外科手術を施すこともある。
また胃潰瘍で気になるのは、胃がんとの関係。胃がん死亡率は低下しているが、発生数は年10万人前後と先進国の中では目立って多い。「胃潰瘍の進行が直接、胃がんにつながることはありませんが、慢性的な炎症が遺伝子異常を増幅させる危険性はあります」と福生所長。WHO(世界保健機関)がピロリ菌を発がん物質に指定した理由でもある。
胃潰瘍への予防対策は(1)ストレスの上手なコントロール(2)バランスの取れた食生活(3)節酒・禁煙(4)不規則な生活を避ける(5)定期的な検査が挙げられる。
【ジャーナリスト 小野隆司】
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